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TPP参加による「生命保険」への影響

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関税を撤廃するTPP

まず最初にTPPについて、おさらいをしましょう。TPPとは、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans Pacific Partnership)の略称です。太平洋を囲む国家間においては「自由に貿易をしましょう」という取り決めです。アメリカやオーストラリア、シンガポール、ペルーといった国々が加盟しており、日本も7月に参加を予定しています。これら加盟国間の貿易においては、「関税をなくし貿易を活性化しましょう」というのです。

関税とは、よその国から入ってくる品物に対して特別に課税する税金です。例えば、ある商品が他国では50万円だとします。同じ商品を日本で作ると、人件費が高いなどの理由で倍の100万円が価格となります。消費者としては、同じものが50万円で買えるのであれば、他国の商品が欲しくなります。しかし、日本の商品が売れなくなると、それを生産している会社は儲からなくなり、従業員を解雇したり、産業そのものが衰退し社会的に大きな損失になってしまうかもしれません。では、海外の品物の値段が105万円だったらどうでしょう。国内の品物の方が安いため、国内の産業は安泰です。もともとの海外での値段は50万円で、日本に輸入し販売する時の値段が105万円、その差額の55万円が関税です。このように、海外の品物の価格競争力を調整するのが関税の役割です。TPPは、この関税をやめて、安いものは安いままの値段で輸出入しましょう、という話です。

例えば、外国の安い農産物がどんどん輸入されると日本の農業は立ち行かなくなると心配されています。一方、自動車産業は輸出する際にかけられていた高い関税がなくなると、今より外国での販売が増えるだろうと期待されています。TPPの損得は産業によって異なるので、一概に良いとか悪いとか言えないのです。

TPPによる生命保険への影響は?

では、生命保険はどうでしょうか?実は保険に限らず、日本の金融業界はこれまで国に手厚く保護されていたので、世界的にみれば「競争力がない」と言われています。投資にしても、保険にしてもそうです。例えば同じ金額であっても、満期のお金が日本の商品より海外の商品の方が多かったり、同じ保険料でより保障の大きな保険が海外にはあったりします。もし、それらの商品がTPPにより自由に国内に参入してきたらどうでしょう。これまで日本のマーケットを独占していた日本の金融機関、保険会社にとっては脅威といえるかもしれません。

TPP参加で、消費者は賢く選ぶ知恵が求められる

消費者の立場で考えると、TPPは私たちに「選択肢」をもたらします。値段もさまざまで、仕組みも多様な商品がどんどん入ってくるのです。法的な保護も商品によって異なることが予想されますので、目先の損得だけではなく、リスクも見極めて判断しなければならなくなります。TPPにより産業界も競争がますます激しくなり、今まで以上の努力が求められるようになります。そして消費者も、より広がった「選択肢」の中から必要なものを賢く選ぶ知恵が求められるようになるでしょう。

年金・資産運用に強い独立系ファイナンシャルプランナー

山中伸枝さん(株式会社アセット・アドバンテージ)

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