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生産性を向上させるための「ノー残業デー」活用法

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「ノー残業デー」が機能しない理由

「ノー残業デー」とは、残業をせず、定時(所定労働時間)で退社する日のことです。最近では、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の推進が目立っていますが、経費削減につながる活動として「ノー残業デー」を導入する企業も増えています。ただ、「ノー残業デー」を導入していても、制度だけで運用が伴っていないという声もよく聞きます。制度としてうまく機能していない理由としては次のような理由が挙げられます。

・制度があるだけで、誰も呼びかけていないので使いにくい。
・仕事が残っているので、実質はサービス残業になってしまう。
・仕事がたまってしまい、「ノー残業デー」以外の日が帰りにくくなる。
・管理職には適用されず、管理職ばかり残って仕事している。

「ノー残業デー」を活用するのであれば、これらの理由の根本的な原因を排除する必要があります。残業の中でも最も無駄なものが「ダラダラ残業」です。例えば「パソコンで何かしているようだが、仕事をしているのかネットサーフィンをしているのかわからない人」「煙草休憩ばかりとっているのに、終業時刻を過ぎても帰ろうとしない人」「休憩室でスマホをいじったり、私用電話をかけて時間つぶしをしている人」「喫茶店や外食に行ったっきりなかなか帰ってこない人」「同僚と無駄話ばかりしている人」といったように、仕事と休憩の区別も曖昧で、集中できる時間が短かったり、無気力であったりして、いつまでもダラダラと残業してしまうことを指します。

この「ダラダラ残業」は悪癖になりますので、放置しておくと企業にとっては最も非生産的な行為となってしまいます。「ダラダラ残業」を排除するためには、管理職が部下の従業員の仕事を正確に把握し、丁寧に指導していかなければなりません。また、会社としても「残業の自己申告制」や「人事評価制度」などにより、防止するための制度を具体化することも必要です。

また、「ダラダラ残業」ではなくても、業務量が多く毎日遅くまで残業が続いているのに、飲み会があるときだけは定時で仕事を終わらしているという従業員はいませんか? 仕事の後にデートや飲み会の予定が入っていたり、歯医者の予約をしているなど、自身の目的や用事があるときだけは段取りよく効率的に仕事を進める人もいます。なぜ、そのようなことが可能なのでしょうか。その答えは、予定がある日は目標とする時間通りに仕事を終わらすために、何をどの順番で終わらせばいいのかを考えて仕事を進めているからです。つまり、意識して仕事に取り組みさえすれば、残業時間の削減は実現可能なものにとなります。

「ノー残業デー」が生む効果

「ノー残業デー」を導入した後は、次のような効果が期待できます。

・業務時間内に終わるように効率化に努めるため、残業時間が減り、人件費を削減できる。
・オフィスの電気代や空調代が節減できる。
・従業員の意識を高めることにより、密度の濃い業務に繋がる。

「毎日が残業」というのではなく、週に1回でも「ノー残業デー」を導入することによって、「定時までに終わらせる」という従業員各人の意識を高めることにつながりますので、メリハリをつけた働き方を浸透させることができ、業務の効率化や労働時間の短縮などの効果があります。「ノー残業デー」の導入により、1週間あたり2時間分の残業が減った場合を考えてみましょう。1年で52週ありますので、「52週×2時間=104時間」の残業時間を削減することになります。法律では週40時間労働制ですので、年間所定労働時間の限度は2080時間となります。「2080時間÷12月=173時間」が1か月の所定労働時間です。

給与総額25万円の従業員の場合で、削減できる残業代を計算すると

1時間当たりの単価・・・・・250,000円÷173時間=1,445円
1時間当たりの割増賃金・・・1,445円×1.25=1,807円
104時間分の残業代・・・・1,807円×104時間=187,928円

従業員が10人とすると、187,928円×10人=1,879,928円の削減効果があることになります。

「ノー残業デー」を活用するために必要な8か条

「ノー残業デー」を掲げるだけでは成果は生まれませんし、活用もできません。上手に活用し、浸透させるためには、会社が具体的な取り組み事例や仕事の段取り、効率化の手段などを従業員に伝えるように努力しなければなりません。

・現状の仕事内容を洗い出す。
・無意味、または必要以上に長いミーティングを廃止する。
・経営者、管理職者が中心となり、従業員の意識を改革する。
・朝一番には今日やるべき仕事の順序を考えておく。
・自分で仕事に期限を設ける。
・報告、連絡、相談をしっかり行う。
・業務内容や職種の専門性等により「会社一斉」に実施できない場合、「部署ごと」や「個人ごと」に「曜日」を設定するなど、定時に退社できるために工夫する。
・仕事前に、自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるスケジュールを計画する。

生産性を向上させるには、目標とすべきゴール(成果)を明確にし、成果に向けて最適かつ最短な方法を取ることが必要不可欠です。そのためには、管理職(上司)は部下の仕事量、仕事配分、進捗状況を把握し、非効率的な行動やミスが見つかった場合は、早い段階で修正することが求められます。また、成果のイメージ化を従業員と共有することも大事です。そして部下は、常に自分の作業を効率的に達成するための訓練を行うこと、そして、上司に対して報告・連絡・相談を意識的に行うことが重要です。

週1日でも決められた時間内で仕事を完了させる訓練を行い、意識しながら業務計画を立てさせることにより、一人一人が効率的な仕事の方法を考えるようになります。そして訓練に慣れ、仕事が効率的に行えるようになるにつれて、趣味やスキルアップのための時間を確保することができ、従業員のモチベーション向上にも効果的です。まずは週1日の「ノー残業デー」を実現することを目標に、会社、管理職、従業員それぞれが仕事に対する考え方や意識を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

企業防衛型の就業規則作成のプロ

田中靖浩さん(牧江・田中社会保険労務士法人)

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