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知る権利が奪われる?危ない秘密保全法案

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法律関連

「特別秘密」への指定で政府にとって不都合な情報が守られる

知る権利が奪われる?危ない秘密保全法案の全容

国民の「知る権利」を奪いかねない法案が、この秋の臨時国会で提出されようとしています。「秘密保全法案」です。この法案は、「国の存立にとって重要な情報」を「特別秘密」に指定し、「特別秘密」を扱う人に対する「適正評価制度」を導入するとともに、「特別秘密」を漏らした人を厳しく罰することなどを柱にしています。2010年に起きた尖閣沖漁船衝突事件のビデオ映像がインターネット上に流出したことをきっかけとして法案化されたものです。

「国の存立にとって重要な情報」は「国の安全」「外交」「公共の安全と秩序の維持」の3つの分野とされています。しかし、何を「特別秘密」に指定するかは行政機関などが決めるものとし、第三者によるチェックがありません。また、「公共の安全と秩序」は国民生活全般に関わることが含まれるため、ときの政府が国民に知らせたくない情報をこれに該当するものと解釈すれば、ことごとく「特別秘密」に指定されてしまう懸念があります。すなわち、法律上は「特別秘密」という言葉で限定しているとはいっても、実際には「政府が国民に知らせたくない情報」あるいは「政府が国民に知られると不都合な情報」として運用される可能性がいなめません。

国民のプライバシーを侵害する「適正評価制度」

次に、「特別秘密」を扱う人に対する「適正評価制度」にも問題があります。これは、住所歴や学歴、職歴のみならず、犯罪歴などを含めたさまざまなプライバシー情報が調査の対象とされるものです。また、調査対象者は情報を取り扱う本人だけはなく、その家族や親戚など「本人の身近にあって、本人の行動に影響を与えうる者」にまで及ぶものとされ、際限のないものとなってしまいます。集められたプライバシー情報が、どのように管理され保護されることになるのかも判然としていないため、管理のされ方がずさんであれば「思想信条による差別」をもたらしかねません。

秘密保全法案は真の民主主義政治を遠ざける

他にも、このような「特別秘密」に対し、不法な方法でアクセスすることも処罰の対象とされているため、マスコミの取材活動にも萎縮効果を与えかねないなどの問題点が指摘されています。真の民主主義政治は、国民が重要な情報を知らされることにより実現されるものです。秘密保全法案は、真の民主主義政治を遠ざける危険性をはらんだものといえます。

田沢剛

法的トラブル解決の専門家

弁護士

田沢剛さん(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

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