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五輪招致で首相がトップセールス。背景にアベノミクス限界説

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「具体策に乏しい」との評価が広がったアベノミクス

五輪招致で首相がトップセールス。背景にアベノミクス限界説

金融政策や財政政策が中心のアベノミクスは、「景気浮揚のための具体策に乏しい」との厳しい評価が春先から急速に広がりました。東京株式市場も、5月下旬には1万6千円を目前にして急反転、シリアへの軍事介入やFRBの量的緩和縮小懸念などの不安材料もあり、不安定な相場が数ヶ月間続いています。そして、6月中旬に発表された第三の矢、民間投資を喚起するための成長戦略(日本再興戦略)の中身も、日本産業再興プラン・戦略市場創造プラン・国際展開戦略などの抽象的な題目が並んだため、市場の信頼を回復するには至りませんでした。

既成概念を覆した首相によるトップセールスが五輪招致の決め手に

こうした流れを一気に変えたのが、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致決定のニュースです。この勝因には、安倍晋三首相のトップセールス効果が極めて大きかったといわれています。IOC総会では、福島第一原発の汚水処理問題に対する諸外国からの強い疑念に対し、具体的データーを示した上で「状況はコントロール下にある」と明言しました。IAEAの専門家や当事者たる東電の技術者からは、100%の安全性が担保されているわけではないとの発言があるのも事実です。IOC委員もそれは承知していたはずですが、一国の首脳が政治生命を賭けて安全性を保証し、万が一の場合は国を挙げて国際公約を守るとの覚悟を示したことが共感を呼んだものと思われます。

経済外交におけるトップセールスとは、エネルギー分野での連携や民間企業の原発・鉄道・通信等のインフラ輸出を、国が円借款やODAを使って後押しするイメージがあります。今回の首相による招致活動は、こうした既成概念を覆すものでした。

五輪を景気回復の起爆剤に。150兆円の経済効果との試算も

では、安倍首相はなぜそこまでオリンピック招致に力を注いだのでしょうか?超金融緩和頼みの政策には自ずと限界があります。また、消費増税問題も財政再建論議や予想される市場の混乱を考えれば回避はできないものの、増税を実行した場合の景気の腰折れ懸念も払拭しきれません。「アベノミクス限界説」もささやかれる手詰まり状態の中で、オリンピック誘致を景気回復の起爆剤にしようと考えたことは間違いないでしょう。

オリンピックの経済効果については、3兆円とか、100兆円は下らないといった議論が始まっています。3兆円は東京都の試算です。これは、今後7年間の合計額で、飲食や宿泊などサービス業が6510億円、建設業が4745億円 、商業が2779億円などとなっています。そして、新たな雇用創出は15万人と予想しています。

1964年東京オリンピックでは、東海道新幹線や首都高速道路・東京モノレールなどの交通インフラが新たに建設され、その後の日本経済発展の礎となりました。今回は極力既存設備を利用するとの方針が有りますので、前回ほどのインパクトは無さそうです。ちなみに英国政府が発表したロンドンオリンピックの経済効果は約6兆円で、雇用創出は36~40万人でした。これに比べると、多少見劣りがする感は否めません。

しかし、民間シンクタンクの中には、観光産業の拡大や老朽化した道路整備などを軸として、景気の好循環を図るために積極的施策を講じれば、150兆円規模の経済効果が望めると試算するところもあります。さて、どうなるでしょうか。

老後に備えた資産形成や不動産活用を顧客目線で考える税理士

松浦章彦さん(<Office MⅡ>松浦章彦税理士事務所)

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