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ダンス規制は憲法違反?表現の自由の侵害か?

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無許可営業のクラブへの取り締まり強化へ

ダンス規制は憲法違反?表現の自由の侵害か?

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(いわゆる「風営法」)では、「ダンスをさせる飲食業」を風俗営業として規制しており、都道府県公安委員会の許可を受けて午前0時(地域によって午前1時)までしか営業できないことになっています。しかし、実際には多くのクラブが無許可で営業している状況で、これまでは警察も黙認してきたようですが、近年になって近隣住民からの苦情が増加したことにより取り締まりを強化し始めました。

もともと風営法は、終戦直後の昭和23年に「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し,及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」ことを目的に制定されたものですが、いわゆる「ダンスホール」が売買春の温床になっていた時代背景が考慮されて「ダンスをさせる飲食業」も風俗営業の一つにされたようです。

ダンスは中学校体育の必修科目。文科省の位置付けとの矛盾も

しかしながら、現代社会においては、ダンスが音楽やファッションなどと結び付いて文化的な色彩を強め、表現の手段としても世界的に認知されるようになってきています。また、日本の文部科学省も「ダンスは、『創作ダンス』、『フォークダンス』、『現代的なリズムのダンス』で構成され、イメージをとらえた表現や踊りを通した交流を通して仲間とのコミュニケーションを豊かにすることを重視する運動で、仲間とともに感じを込めて踊ったり、イメージをとらえて自己を表現したりすることに楽しさや喜びを味わうことのできる運動」と位置付け、平成24年度からの中学校体育の必修科目にしているのです。

過度の規制はアーティストの芽を摘んでしまうことに

そうだとすると、風営法によるダンス規制は、憲法で保障された表現の自由や幸福追求権を侵害するものだといった意見が出てくることも頷けるところといえるでしょう。風営法の規制対象となっているクラブが、ダンス技術を磨く場として機能し、アーティストが育つ場所となっているのだとしたら、過度の規制はアーティストの芽を摘んでしまうことにもなりかねません。

ダンス規制のあり方は、地域住民の平穏な生活と、表現の自由や芸術・文化の発展といった対立する利益をどのように調和させていくのかという非常に難しい問題を孕(はら)んでおり、国民による活発な議論が必要な時期に来ているといえるでしょう。

田沢剛

法的トラブル解決の専門家

弁護士

田沢剛さん(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

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