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大企業交際費50%まで非課税、効果は期待薄?

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期待外れの与党税制大綱。最大の理由は法人減税の先送り

大企業交際費50%まで非課税、効果は期待薄?

12月12日、自民公明両党による平成26年度与党税制大綱が発表されました。「アベノミクスの総仕上げ」ともいわれる「第三の矢」の成長戦略に影響を与える来年度の税制改正は、やや力不足感が否めないものとなってしまいました。

期待外れの最大の理由は、法人減税を先送りしてしまったことにあります。海外からの積極投資に頼らざるを得ない少子高齢国家日本にあって、中韓両国をはじめ20%台半ばの法人税率の東南アジア各国と比べると、40%近い法人税率の日本は企業の進出先としては明らかに見劣りしてしまいます。企業に利益を出させ、新規設備投資を促すとともに、収益構造を強固なものにして従業員の給与を上げさせる。個人消費が増えないことには内需拡大による力強い成長は見込めないのです。この循環をスムーズに促すためには法人税減税が有効な手段であることは異論がなかったところです。

バブル崩壊後、経営に対する意識が変化。交際費は急に増えない

そんな中、浮上したのが「大企業の接待交際費を50%非課税(損金算入)にする」という策でした。企業の接待交際費が1992年度の6兆2千億円から2011年度には2兆8千億円に激減し、東京銀座でも高級クラブの廃業や倒産が相次ぎました。バブル崩壊後、交際費を抑制してきた大企業にとって救世主ともいうべき施策のように見えます。

しかし、政府与党は日本の企業の現状を理解しないままに、この施策を発表してしまったかもしれません。というのも、企業の経営に対する意識がバブル崩壊後の20年間で、大きく変遷してしまっていることに気づいていない可能性があるのです。大企業においては、利益優先、株主配当優先の姿勢とコンプライアンス(取引先との癒着回避)意識、手元資金を少しでも多く残したいという欲求は、さらに強くなっています。財務担当者からの支出抑制圧力が急に緩くなることも到底考えられません。

実際、既に施行されている1人当たり5,000円以下の飲食費の損金算入制度では、大企業がこぞって1人当たり5,000円以下の飲食費になるよう消費単価を下げてしまいましたし、中小企業用に年間800万円までの交際費は全額非課税(損金算入)となる改正があっても、中小企業の交際費の支出額が一向に増える気配がありませんでした。

大企業1社当たり1300万円の交際費支出増加を当て込み

バブル期には土地や物価が値上がりし、あこがれの一戸建てが高嶺の花となってしまいました。そして、「土地も建物も買えないのなら、いっそ贅沢してしまえ」とばかりに高級車を買ったり、ブランド物を身にまとったり、さらには豪遊したりという姿が当たり前になっていったのです。しかし、その後の景気低迷が、企業にも人にもお金の使い方に変化を生じさせたのは周知の通りです。

このような状況下ではありますが、日本国内には約1万社の大企業があるといわれています。政府与党は、この措置による法人税の減収額を650億円見込んでおり、1社当たり1300万円の交際費支出増加を当て込んでいます。大企業には交際費をしっかりと使ってもらって、景気浮揚に一役買ってほしいと思います。

山根敏秀

企業の資金繰りや黒字化経営に精通する税務のプロ

税理士

山根敏秀さん(税理士法人マネジメント/グランドリーム)

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