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地震の備えに利用を。神戸市の家具固定補助制度

阪神・淡路大震災での内部被害の47%は家具等の転倒落下が原因

地震の備えに活用を。神戸市の家具固定補助制度

19年前の震災当時、私は比較的倒壊が少なかった明石市に住んでいました。のちに、家屋が倒壊していない家で本棚の下敷きになって亡くなった人の話を、我が身に置き換えて恐ろしく聞いたのを覚えています。当時、床で寝ていた私の部屋には壁際に洋服ダンスを並べていました。当然、震災で引き出しがすべて開き、中身が飛び出しました。そして。その上にあったラジカセも飛んできました。よくも何も当たらずに部屋から出れたものだと思います。実際、阪神・淡路大震災での内部被害の47%は、家具等の転倒落下が原因とする調査データもあるようです。

このような被害を防ぐには、まずは家具の配置に工夫が必要です。就寝位置の正面に家具を置くと、下敷きの恐れが高まります。就寝位置は、家具の側方としてください。また、就寝位置が正面の場合は、家具の高さ以上に十分な距離をとりましょう。部屋の扉は、内開きがほとんどです。扉の前に家具が倒れてしまうと、即座に避難しようとしても家具が邪魔で扉が開きません。倒れても避難路を遮らない場所に家具を配置することも重要です。このように配置を考えていくと、なかなか部屋の家具を配置をすることが困難になってきます。よって、家具を固定して、家具自体の転倒や倒壊を防ぐことが必要なのです。

家具固定に最大1万円。しかし、利用は年500戸に届かず

神戸市は、2006年より家具固定補助制度を開始しました。個人向けに、家具を固定するにあたり、施工費用の半分(最大1万円)が補助されますので、一つの家具を固定するのにかかる費用の数千円~1万円の半分の負担で済みます。「家具固定あんしんホットライン」を設けていますので、市民であれば誰でも相談することができます。

しかし、個人の利用は年約20~70戸にとどまっているようです。2011年からは団体での申し込みを開始していますが、2013年度(11月末まで)の申し込みは14団体(296戸)です。個人よりも戸数は多く受け付けていますが、市の目標である年500戸には届きません。

防災意識の薄い関西、自助の精神の普及が必要

東南海・南海地震は、いずれ必ず起こるといわれています。家具固定は、震災被害を食い止める効果が大きいにもかかわらず、あまり神戸市民にはなじみがないようです。その原因の一つは、震度1~4ぐらいの小中規模の地震をあまり日常的に感じることがないからでしょう。関東エリアと関西エリアでは、有感地震の回数は極端に異なり、特に神戸は非常に少ないといえます。「日常の危険を防ぐ家具固定」と発想する地域と違い、神戸では「万が一発生する大きな地震に備えるための家具固定」となるでしょう。

家具固定は、最も簡単にできる耐震補強工事です。防災意識を高めて自助の精神を普及させるため、住宅耐震化の促進とともに、家具固定の促進を日常メンテナンスを行う工務店などが住宅所有者へ地道に働きかけを行う必要があるといえるでしょう。

中古住宅の物件選び・ローン対策・リフォームのプロ

谷弘一さん(こうべリノベーション(㈱谷工務店))

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