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賛否渦巻く「目力看板」、継続すべき?

「誰かに見られている」効果は絶大。放置自転車が1割にまで減少

賛否渦巻く目力看板、継続すべき?

神戸市の「放置自転車対策」で登場した「目力看板」が大きな議論を巻き起こしています。JR、阪急、阪神、市営地下鉄、ポートライナーなどが乗り入れる三宮駅の約200メートル南にある「神戸国際会館」前歩道に、昨年11月、男性の目元を大写しにした写真看板が出現しました。

この「目力看板」は、兵庫県警の「科学捜査研究所」の協力も得て「誰かに見られている」という深層心理を利用する形で発案されたものですが、その効果・威力は抜群であり、付近の放置自転車が最高で従前の1割にまで減ったと言いますから驚きです。

2010年に英国ニューカッスル大学の心理学者らが発表した研究論文にも「こちらを見つめる2つの瞳」の絵を掲示することで、人々が行儀よく振る舞ったり、正しい行動をとる効果があるという研究結果が掲載されています。人間は「じっと見られている」と感じるだけで、多少なりとも「うしろめたいこと」を避けようとする行動へと傾いてしまうようです。

「目力看板」には「怖い」「気分が悪い」などの批判的意見も

しかしながら「じっと見られる」ことは「不快感」にもつながります。「メンチを切る」という言葉があるように、睨みつけられることはケンカを売られていることに等しいと感じる人間だっているのです。実際に「目力看板」を見た私自身も、「怖い」「気分が悪い」「逃げ出したくなる」「子どもが泣く」などといった批判的意見の方に頷きたくなってしまいます。

確かに「放置自転車」を防ぐ効果は評価できるとしても、それらの自転車がいったい何処へ行ったのかについては解明されていません。自転車が「目力看板」の無いところに放置されただけのことなら、さらに「目力看板」の設置範囲を拡げるという方策を取らざるを得なくなります。それでは「不快感」たっぷりの「目力看板」が街中にあふれ返ることにもなりかねません。ファッション都市・神戸にはふさわしくないでしょう。

放置自転車の撲滅には駐輪場完備という「正攻法」しかない

現在、「目力看板」は撤去されていますが、神戸市は今後も引き続き、さまざまな看板の効果を詳しく分析することを予定しています。「目力看板」は、何種類かの看板を使った「社会実験」の中で登場した一つの「候補」に過ぎないのですが、それぞれの看板の効果を個別に検証した結果次第では、あらためて「目力看板」が復活する可能性もあると言いますから少なからず心配です。

ファッション都市・神戸の表玄関から本当に放置自転車を「撲滅」したいと考えるなら、自転車駐輪場を完備するしかありません。その「正攻法」を避けるために考案された「目力看板」は、その場しのぎの「姑息な手段」と批判されても仕方がないと、私自身は思います。

職人かたぎの法律のプロ

藤本尚道さん(「藤本尚道法律事務所」)

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