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京の「空き家」活用開始。どう修繕すべきか?

京都市内の約7軒に1軒が空き家

京の「空き家」活用開始。修繕の注意点

京都市内の空き家は、平成20年の統計調査によると総数11万戸。その割合は一戸建て木造建築が3万3070戸、非木造建築が1540戸、長屋建て・共同住宅等の木造建築が1万5650戸、非木造建築が6万30戸となっています。市内の住宅総数約78万戸の14.1%を占め、約7軒に1軒が空き家ということになります。

特に大きな値を示しているのが、木造一戸建て住宅と非木造共同住宅です。一戸建ての木造住宅は、戦後に建った在来工法の住宅と、戦前から建っている「京町家」と呼ばれる伝統建築の二つに分類できます。「京町家」は、戦災の被害が少なかった京都ならではの古建築群。非木造共同住宅は、マンションなどが該当します。

京都市では空き家対策の条例が施行。空き家を放置すると危険

空き家が放置される理由。それは、「所有者が複数の建物を相続などで持つことになり、住むことができない」「逆に相続人が多くて権利関係が複雑になり、結局は誰も使えない」などがあります。他に、「改修・修繕をして再び建物を使いたいけれど、工事費用が工面できない」「更地にするより空き家にしておいた方が税金を抑えられる」なども挙げられます。

木造住宅の場合、建物の状態が良好であれば早急に問題は出ませんが、不審者の侵入・住みつき・放火などもあり得ます。また、地震などで損傷を受けていたり、屋根に問題があって雨漏りがしていたり、壊れた窓から猫や犬が入って糞尿などをしていたりすると、建物は急激に劣化して危険家屋になってしまいます。完全放置にならないように、週に一度は空気の入替や建物の状態を確認するなどして管理を続けた方が建物の価値を下げずにすみ、再活用するときにも低コストに押さえられます。また、完全放置していると木材が腐って屋根が落ち、瓦などが周辺家屋の敷地や道路に落下するなど大きな事故につながります。放火されれば大災害に。もしこんなことが起きれば、近隣住民に多大な迷惑をかけてしまいます。

4月から京都市では空き家対策の条例が施行されます。基本的に、空き家のまま放置することができなくなるので、所有者は利活用や権利関係の整理、改修費用などを捻出する必要も出てきます。

土地の状況、建物への思い、修繕費用から選択肢を考える

一戸建木造建築の場合、空き家のままで置いておけないのなら二つの選択肢があります。一つは建物を除却し、更地にしてから活用を考える方法と、空き家を再利用する方法。京都市内の敷地条件などを考慮していくと、その分かれ目が見えてきます。

■その土地が、再建築が可能な土地で、しっかりとした道路に接道しているか?

この場合は除却という選択肢も出てきます。しかし、再建築不可の土地であれば、除却すれば更地を有効活用できなくなってしまうため、注意が必要です。土地の条件は専門家に相談してください。

■その建物に対する思いは?

代々住み続けてきた住居で親族が集まる場となっていたなど、感情的なものや歴史的な価値観を感じる場合は、直して再び活用し続けるという選択肢も考えるべきでしょう。

■修繕費用から考えると…?

少し手を入れればすぐに使えるものから、建物の大きなゆがみや白アリの被害など、問題によりかかる費用はさまざまです。「これは直せない」と思われる建物でも、専門家が再利用の可能性を見い出すこともありえます。建物の修繕は一人で判断せず、専門家に相談してください。自ら所有・活用を考えるのも良いですが、現状のまま活用できる人に貸す、あるいは売却するという案もあります。受継いだ土地建物を手放せない、所有権を持っておきたいという気持ちがある場合は、その不動産を証券化して管理を委託することも可能です。「サブリース」という言葉がありますが、借りた方が改修費用を持ち、賃貸で収益を出して本来の所有者に還元するということもできます。

京町家の修繕は、伝統建築をよく理解している設計者や工務店に依頼するのが良いでしょう。戦前まで町並みを形成していた伝統家屋も、戦後の建築基準法によって推進された在来工法の住宅にとって代わろうとしています。このような背景から、職人の多くは在来工法の技術は持っていても、伝統工法の経験を得る機会がほとんどない状態です。建築士も伝統建築を理解しているものはごく一部です。これらを考慮して専門家を選ぶことをオススメします。

町家の知識を生かした家づくりのプロ

冨家裕久さん(一級建築士 冨家建築設計事務所)

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