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労働者の新たな武器?「労働審判」とは?

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司法制度改革の一環として労働審判員を関与させる新たな手続

労働者の新たな武器?「労働審判」とは?

労働審判法1条によると、「労働審判手続」とは、「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争に関し、裁判所において、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で組織する委員会が、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決に至らない場合には、労働審判(個別労働関係民事紛争について当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判)を行う手続」とされています。

まず、通常の訴訟手続とは異なり、裁判官のみならず、労使関係ないし労働現場の実情等について十分な知識、経験を有するとされる労働審判員2名が審理に加わります(裁判官と審判員2名の合計3名を「労働審判委員会」と言います)。裁判官のみの判断では「非常識な判断」をすることがあると批判されてきたことから、司法制度改革の一環として労働審判員を関与させる手続を新たに設けたものです。

次に、原則として3回以内の期日で審理を終結させるものとされており(同法15条2項)、実務的には申立てをしてから概ね3か月程度の間に3回の期日が設けられる運用で、通常の訴訟と比べると、迅速な審理がなされることが予定されています。もちろん、そのために当事者が相応の準備をしなければならないことは言うまでもありません。基本的には、申立てから40日以内に指定される第1回期日において、労働審判委員会から心証が開示されるとともに、双方に調停案が示されることになります。実際の統計(平成21年から平成25年4月まで)によりますと、全体の75パーセント程度が3か月以内に終結しているようです。

早期解決の手段として労働者の武器に。しかし、「諸刃の剣」にも

では、このような労働審判は、労働者の武器になるのでしょうか。都道府県労働局長が行っている助言・指導、労働局の紛争調整委員会による斡旋などのADR(裁判外紛争処理システム)による紛争解決は、あくまでも当事者の合意に基づくものですから、合意が形成できない場合には手続が打切りとなってしまいます。それに対し、労働審判は、合意が形成できない場合(調停が成立しない場合)でも結論(審判)が出されます。審判に不服のある当事者は、2週間以内に異議申立てをすることにより審判を失効させ、通常訴訟手続に移行させることができるのですが、前記のとおり、労働審判は「当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判」と定義付けられていますので、労働審判委員会が出した結論は通常訴訟でも維持される可能性が高いものと考えられます。

そうすると、早期に紛争を解決するという手段としては、労働者の武器になると言えるでしょう。ただし、審理期間が短いということは、その間の準備を疎かにしてしまうと、労働審判委員会に不利な心証を抱かれてしまうことにもなりかねません。労働者にとっての武器も使い方次第では「諸刃の剣」となることに注意が必要です。

田沢剛

法的トラブル解決の専門家

弁護士

田沢剛さん(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

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