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大阪都構想、実現への法律の壁

府と市がバラバラに進めていた戦略・政策を一本化

大阪都構想、実現への法律の壁

大阪都構想とは、人口260万人の大阪市を複数の特別区に分割再編した上で公選区長の下に住民自治を委ね、広域行政は大阪府に一元化する構想です。主な目的としては「二重行政の根絶」と「住民生活をきめ細やかに守る組織体制の整備」とされています。都構想で予定されるメリットの一つは、迅速な意思決定、選択と集中の徹底を可能とし民営化により無駄のない経営を行うこと。具体的には、二重行政による非効率を解消するために、府市統合本部を設置し、重複した行政サービスを見直し、府と市がバラバラに進めていた戦略・政策を一本化されると主張しています。

また、公募区長(区長公選)制を導入し、住民に身近な行政サービスを担わせるとしています。このことによって、区長の裁量を大きくし、その区長を住民が選ぶことによって、区民が区の実情に合わせた住民サービスを選べることになります。

都市計画法や地方税法などの法律を無視はできない

しかし、この都構想の実現には「①府市議会の賛成」「②国会における関係法律の制定」「③府市民の住民投票での賛成」の3 つのハードルがあると指摘されています。このうち、法的ハードルと言えるのが、「②国会における関係法律の制定」です。

そもそも、現行法には大阪都構想を実現するための仕組みが存在しないため、国会において関係する法律を制定する必要があります。制度化に当たっては、大阪独自の制度とするのであれば大阪のみに適用する特別法を制定し、大阪以外にも適用できる一般的な制度とするのであれば地方自治法を改正することになると考えられています。また、その他にも都市計画法や地方税法などの様々な関連法の見直しが必要です。

現在は昨年8月に、国会で「大阪都構想」の実現を後押しするとされる「大都市地域特別区設置法」が成立し、これによって、東京都以外の道府県でも総務大臣が認可をすれば「特別区」を新設できる基盤があるという状況です。ただし、現在の状況でも認可を受ければ直ちに「大阪都」に移行できるではありません。上記の①③というハードルがある他、都市計画法や地方税法などの法律を全く無視した状態で新たな区を設けることはできないからです。

総務省の地方自治法改正案が大阪都構想実現への鍵を握る

総務省が、今通常国会に地方自治法改正案を提出する予定だそうです。この改正案は、政令市の枠組みを残したまま、政令市の行政区の権限強化、道府県と政令市の二重行政解消を狙いとする「調整会議」の設置等を内容とするもので、大阪市を解体し特別区に再編する都構想の理念と共通する部分も多く、今後の大阪都構想の行方に影響するのではないかとの見方もなされています。ただし、調整会議では全くの一元化がなされておらず、また区長の選び方も選挙によらないなど、大阪都構想との違いも大きいところです。

総務省の地方自治法改正案が成立するかは、都構想が実現するかどうかの大きな鍵となると思われます。特別区の新設改正法案の行方に注目すべきです。

企業法務と事業承継支援の専門家

大西隆司さん(なにわ法律事務所)

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