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男性の育休取得、日本で浸透しない背景

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「女性が働き続けられる社会」へ。男性の育休取得の現状

男性の育休取得、日本で浸透しない背景

安倍首相が打ち出す成長戦略において、「女性が働き続けられる社会の構築」は重要な課題とされています。女性が妊娠・出産後も働き続けやすい環境を作るためには、男性の育児参加が不可欠とされているのですが、実際のところはどうなのでしょう。

時代と共に働く男性の意識も大きく変化し、育児休業制度を利用したいと考える男性の割合は3割以上に達しています(平成20年、㈱ニッセイ基礎研究所)。しかし、実際に育休を取得した男性の割合は全体のわずか1.89%にすぎません(平成24年度、厚生労働省)。しかも、その数少ない育休取得者についても、育休を取った期間が2週間未満の者が6割を超える結果となっており、本当に「男性が育児に参加している」といえる状態ではないことがわかりました。

男性部下の育児休業取得を妨害するパタニティ・ハラスメントも

育児休業を取得しづらい背景に、社員の育児休業期間を補う余力が企業側にないことが考えられますが、それは取得者の性別に関係なく発生する問題です。

では、どうして日本では、女性に比べ男性の育児休業取得率がここまで低いのでしょうか。まずは、「育児は女性の仕事」という社会の意識が未だ根強いことが挙げられます。女性が育児休業を請求することに対しては寛容度が比較的高い一方で、男性が取得請求すると「変わった人」とレッテルと貼られるくらい世間の抵抗感があります。人員削減でどの職場も手一杯な状態で、「育児ごときで休むはずのない男性」が育児休業で抜けてしまうと、確実に同僚の負担が増大する上に、同僚の不満も高まります。自分が休業した場合の職場の状況が想像できるだけに、男性が育児休業を取得したいとは言えなくなってしまいます。

また、旧来の「男は仕事」といった価値観を持った上司が、男性部下の育児休業取得を妨害する「パタニティ(父性)・ハラスメント」も発生しています。上司が育休取得そのものを妨害するだけでなく、育休取得者の評価を下げたりするなど、復帰後のキャリア形成に支障をきたすこともあるようです。さらに、「収入の減少」が考えられます。育児休業中は、無給でも雇用保険から育児休業給付が支給されますが、それでも休業せずにいるよりも収入は確実に目減りします(休業前賃金の50%)。日本では、まだまだ男性が一家の大黒柱であることが多く、一家の収入を減らしてまでも育児休業を取得して欲しいとは、妻の側も言い難いのではないでしょうか。

育児休業だけが選択肢ではない。支援していく仕組み作りに期待

男性が育児に参加することは、とても有意義なことです。女性が働き続ける環境を作るためといった補助的な意味合いだけではなく、男性にとっても我が子の成長をしっかりと見守ることが出来る貴重な経験となります。家族としての絆も深まることでしょう。しかし今の日本では、男性が育児休業することは現実的にハードルが高く、様々なトラブルを生んでしまう労働環境であると言えます。

男性が育児参加するための制度は、何も育児休業だけではありません。育児のために完全に休業してしまうのではなく、在宅勤務で仕事の時間と進め方を調整するといった方法も考えられます。人生を豊かにするための多様な働き方を認め、それを支援していく仕組み作りが期待されます。

人事労務コンサルティングの専門家

大竹光明さん(社会保険労務士法人大竹事務所)

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