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選挙で白票、選挙権の行使といえる?

大阪市長選、投票者数の14%が無効票の異例の結果

選挙で白票、選挙権の行使といえる?

先般、行われた大阪市長選は23.59%と過去最低の投票率を記録し、投票者数の14%を占める票が白票などの無効票となる異例の結果となりました。有権者の出口調査では、出直し市長選の実施について「評価しない」とする回答も相次ぎ、白票を含めた無効票は、この市長選自体を評価しないとする市民の意思の表れともとれるところです。

では、このように、選挙で白票を投じることで、果たして選挙権を行使したといえるのでしょうか。公職選挙法44条は、「選挙人は、選挙の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない」とし、同46条1項では、「選挙人は、投票所において、投票用紙に当該選挙の公職の候補者1人の氏名を自書して、これを投票箱に入れなければならない」と規定されています。

また、選挙権の性質について、「権利である」「公務である」「権利とともに公務としての性質を持つ」とする学説の争いがあります。権利とする説からすれば、権利を放棄することは可能であるので、白票は、公職選挙法の46条1項の規定に違反し無効でも、候補者の中で誰も信任しないことを示したものとする考え方に結び付きやすいように思えます。一方で、公務員の選挙に関する公務の執行として義務的であると考える説からすれば、有権者は選挙権を放棄できず、また、故意に無効票とする行為である白票では、選挙権を行使したとはいえないとする考え方に結び付きやすいといえるでしょう。

自由選挙の原則からすれば、白票を禁止することは難しい

憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とし、参政権の重要な権利として選挙権を規定していますが、ここにいう選挙権とは、普通選挙、平等選挙、自由選挙、秘密選挙、直接選挙という原則を含んでいるとされています。白票でも、選挙権の行使といえるかどうかについては、選挙において投票を棄権しても制裁(例えば、罰金や今後の投票権を認めないとする処置など)を受けないとする自由選挙の原則と大きくかかわるところです。自由選挙の原則からすれば、投票すら行わない棄権ですら制裁がないのですから、白票を投じた者に対し積極的にこれを選挙権の行使と認めず、制裁を科すことは許されないでしょう。また、有効票を入れたか、無効票を入れたかの詮索を行うとすれば、秘密選挙(憲法15条4項前段、公職選挙法46条4項の無記名投票等)の原則との関係でも問題となりうるところです。

以上のように、白票は公職選挙法の規定に反する投票のため有効な投票とはなりませんが、自由選挙の原則からすれば、白票を禁止することは難しいでしょう。また、民主主義において選挙権の重要性はいうまでもありませんが、白票を投じるような投票行為を積極的に選挙権の有効な行使方法と評価することも難しいと思います。今後は、政党を問わず、白票ではなく、有効な選挙権を行使できる有意義な選挙を行っていくことが政治的課題であると考えるところです。

企業法務と事業承継支援の専門家

大西隆司さん(なにわ法律事務所)

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