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相次ぐ外国人差別、罰する法律は?

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遍路小屋に外国人排除の貼り紙、警察が軽犯罪法違反で捜査

相次ぐ外国人差別、罰する法律は?

先日、四国霊場八十八カ所を巡る参拝者らが休憩する遍路小屋で、「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」という貼り紙が見つかったとの報道がありました。また、3月には、サッカーJリーグの浦和レッズの試合で、差別的な意味に取ることができる「JAPANESE ONLY」(日本人以外お断り)と書かれた横断幕が掲げられたという問題がありました。

このような言動は、犯罪行為となるのでしょうか?遍路小屋での貼り紙については、警察が軽犯罪法違反で捜査しているとの報道です。軽犯罪法は、比較的軽微な犯罪を定めたもので、刑罰は拘留(30日未満の身柄拘束)、科料(1万円未満の財産刑)です。 今回は、軽犯罪法1条33号(みだりに他人の家屋等にはり札をしたなどの場合)違反が問題となっているようです。また、徳島県屋外広告物条例違反(30万円以下の罰金)の問題も指摘されているようです。

ヘイトスピーチ禁止の立法化は慎重になるべき

外国人を排除・差別する表現そのものは犯罪にはなりません。日本の現行法では、人種や国籍、性別などを理由に暴力的・差別的な表現(ヘイトスピーチ)自体を犯罪として禁止してはいないのです。しかし、東京での反韓デモや、沖縄で米軍人や家族に対して罵声を浴びせるといったことが続き、ヘイトスピーチ禁止の立法化の動きもあります。

禁止する法律が無いのは、表現の自由に配慮したためです。これは、ヘイトスピーチを表現の自由が許容しているということではなく、何らかの名目で表現の自由を規制できるとなると、意見表明を萎縮させて多種多様な主張を黙らせてしまう結果になることが民主国家としては良くないことだからです。ヘイトスピーチ規制を名目として、政府への批判的な言論を規制するようなことになっては大問題ですので、ヘイトスピーチを直接規制するような立法は慎重になるべきだと考えます。

外国人差別の問題は、現行法の規定に基づいて対応できる

ヘイトスピーチなど外国人差別の問題は、新たな法律で表現内容を直接的に規制するのではなく、現行法の規定に基づいて毅然と対応することで足りるでしょう。例えば、遍路小屋の場合のように、軽犯罪法違反や地方自治体の条例違反での対応もありますし、建物等の効用を害すると評価される程度に貼り紙などをした場合は、条例違反より重い建造物損壊罪(刑法260条)や器物損壊罪(刑法261条)に問われることになるでしょう。差別的な表現をすることを禁じられている場所に立ち入って、差別的言動をした場合は、建造物侵入罪(刑法130条)の成立が考えられます。

特定の団体などの名誉を毀損する表現がされた場合は名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)での処理になるでしょうし、生命などへの危害を告知する内容であれば脅迫罪(刑法222条)の成立も問題になります。

また、差別的な言動をすることで、スポーツの試合の運営を妨げたりした場合等は、業務妨害罪(刑法233条・234条)に問われると考えられます。

中小企業をとりまく法的問題解決のプロ

林朋寛さん(北海道コンテンツ法律事務所)

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