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大人の「中二病」に要注意。診断や治し方、こじらせた人の特徴など

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「中二病」自体は人の発達過程において以前から存在するもの

メディア研究者の新井克弥氏は、「中二病化する現代社会」と題するブログの中で、成人の「中二病患者」が増えていると述べています。この「中二病」、1999年にタレントの伊集院光氏が自身のラジオ番組で、中学校2年生くらいの思春期によくある「成長過程にありがちな恥ずかしい行動をすること」を指して使いだしたのが発端とのことです。

その後、インターネット上で「中二病」という言葉が広がるにつれ、さまざまな解釈が出されていますが、基本的には「思春期にありがちな自意識過剰の言動を揶揄的に表現したもの」といえるでしょう。この定義の中心にあるのは「思春期にありがちな自意識過剰の言動」ですから、「中二病」自体は別に目新しい現象ではなく、人の発達過程において以前から見られる現象ということになります。

ちなみに「自意識過剰」は英語で「too self-conscious」といいます。「self-conscious」が「自意識」、つまり己を意識することを意味し、「too」はそれが過度にあることを示します。

中二病の特徴と思春期

中二病の特徴として、よく「無理してブラックコーヒーを飲み始める」とか、「自分はなんでもできる」とか、「自分には秘密の能力があると思う」、あるいは「親に反抗的になる」といったことが挙げられますが、いずれも思春期に見られるものです。

思春期には、独立の欲求と反抗行動が現れます。「無理してブラックコーヒーを飲み始める」「親に反抗的になる」などは、思春期にある自立を求める気持ちの表れと解することができます。親や大人から心理的に離れたいということです。そして、親や学校などに反抗的な態度を見せることにもなります。

また、この時期には「自分とはどういう人間なのか」と考え始め、まわりと自分を見比べて自分を確かめようとします。よく言われる「自我の目覚め」ということですが、まわりと比較した結果、他に対し優越感を覚えたり、反対に劣等感を抱いたり、気持ちが不安定に揺れ動きます。「自分はなんでもできる」「自分には秘密の能力があると思う」などはそうした不安定な気持ちから生まれるものといえるでしょう。

自立を求める一方で、まだ親に依存したいという気持ちがあり、その混乱が不安定な言動となって表れます。「自立への欲求」と「依存への欲求」が自身の中で激しくぶつかり合い、過度に情緒的な反応を示すのです。しかし、これらは誰もが通る道です。

ネット社会と大人の「中二病」

問題なのは、本来は成長の中で見られる一過性の現象であるはずの「中二病」が、新井克弥氏によると、現代社会ではインターネットの普及に伴い大人にも増えているということです。それが事実かどうかは、「中二病」という概念自体があいまいなため、実証はすぐにはできません。

しかしながら、インターネットの普及が人の精神発達の過程に影響を与えていることは十分考えられるでしょう。つまり、インターネット上で構築されるバーチャル(疑似的)な世界と現実の世界の混同が、自我や対人関係の形成に与えるということです。

内閣府が出した「平成29年版 子供・若者白書」には、「若者にとっての人とのつながり」という特集があり、人とのつながりに関する意識調査の概要が載せられています。

「若者がどのような場を居場所と感じているのか、また、どのような相手とつながりを感じているのか」については、「①自分の部屋」「②家庭」「③学校」「④職場」「⑤地域」「⑥インターネット空間」の6つの場が設けられ、回答結果は「①自分の部屋89.0%」「②家庭79.9%」、そして次に多かったのが「⑥インターネット空間62.1%」でした。その一方、「③学校49.2%」「④職場39.2%」「⑤地域が58.5%」です。

また、「他者と関わる際のインターネットの利用」に関する調査では「場所を問わないので参加しやすい」「情報発信・収集の手段として活用できる」と答えた若者の割合が大きく、「他者と関わる際にインターネットを利用することについて、手軽さや利便性を感じていると考えられる」としています。

ただ気になるのは、回答の中で「深く関わらなくてすむので参加しやすい」「素直に話ができるので便利」という回答も多いという点です。

これは現実の人間関係では相手と深く関わらなくてはならないことがあり、また、自分の意見を素直に話すことができない場面もある、ということを意味しているのではないでしょうか。そして、インターネットを利用することによる「他者との関わり」が気軽であり、ストレスが小さいことが若者にとって「良い」ということなのでしょう。

ネット上の人間関係は、現実の人間関係に比べ確かに手軽であり、便利です。双方向でありながら、自分が気に入らなければ、いつでも一方的にその関係を切ることができます。しかし、現実の人間関係ではそう簡単にはいきません。このネット上の関係の手軽さが、逆に対人関係での未熟さ、また、それの前提となる自我の成長の未熟さにつながっていると考えられます。

人間とインターネットのかかわりについてはさまざまな観点からの調査・研究が進められています。例えば、米国ミズーリ大学の研究では、社会的に孤立している人がFacebookに友人関係を頼る場合、孤独感をより強めるとされています。

また、友人がどのような生活をしているかを自分と比較する目的でFacebook上のサイトを閲覧している人は、友人や家族との連絡のためにFacebookを利用している人に比べ、うつ病の症状を起こしやすいという報告も同じ米国ミズーリ大学から出されています。例えば、友人の楽しげな休暇の写真を見たり、高額な買い物をしているのを見たりすることで落ち込んでしまい、それがうつにつながる可能性があるという指摘です。

この報告には、調査のサンプルが少ないことや、インターネットのポジティブな面も明記されており、一方的にインターネットの弊害を説くものではありません。しかし、インターネット、SNSは使い方によってはマイナスの影響があるということです。

大人の中二病の特徴

さきほど、中二病を「思春期にありがちな自意識過剰の言動を揶揄的に表現したもの」としました。これをふまえると、大人の中二病は「思春期にありがちな自意識過剰の言動を成人後もとる」ということになります。

しかし、思春期の中二病と大人の中二病には違いがあり、思春期に「自分はなんでもできる」とか、「自分には秘密の能力がある」と思ったことがあるとしても、大人の中二病はそれがフィクションであることを内心では感じている、無意識の中で知っていると考えられます。それにも関わらず中二病的な言動をとってしまう、つまり大人の中二病者は、中二病を卒業していない、あるいは、中二病をこじらせた人といえるでしょう。

大人の中二病としてよく指摘される言動は次のようなものです。

自己中心的
自己愛が強く、自分が一番でありたいとの思いが強い。

強い自己主張
自分が一番であることを示したいため、主張が強く、他人の意見を認めようとしない。相手の意見を打ち負かすため、攻撃的な言動になる。

かまってもらいたい
人にかまってもらいたい欲求が強く、さまざまなアピールをする。

プライドが高い
自分は特別だという気持ちがあり、そのためミスをおかしても自分のミスを認めようとせず、さまざまな言い訳に終始する。

自分を大きく見せたがる
例えば、著名人との接点などを周囲にことさらアピールし、自分が大きな存在であると思わせたがる。

こうした項目にいくつあてはまるか、自分自身のことを振り返り、考えるきっかけにするのもいいかもしれません。

大人の中二病の問題点

インターネット上には「中二病の部下との接し方」といったブログなどもあり、上にあげたような項目にあてはまる大人の中二病を部下に持つ上司はたいへんだろうと思いますが、問題は「一過的であるはずの中二病をこじらせてしまい、対人関係をうまく構築することができない」という点でしょう。

対人関係は人間の心の状態を大きく左右します。良好な対人関係を構築できないということは、大きなストレスを生みます。職場で言えば、中二病の部下を持った上司や周囲もそうですが、大人の中二病である本人にもストレスが生じるということです。

「中二病」には「病」という言葉が入っていますが、この「病」は揶揄的な表現であって、実際に治療が必要となる医学的な意味での病気ではありません。ですから「大人の中二病」も、医学的なものではありません。ただ、対人関係からくるストレスは適応障害につながる例も多く、長引くと、うつ病や不安障害となる場合もあります。

適応障害とは、ストレスが原因で引き起こされる心身の症状によって仕事や学業などが大きく阻害されたり、困難になったりする状態を指します。そして、不安障害は心配や不安が過度になりパニック障害などによって日常生活に影響が出る状態をいいます。

「中二病」対策としてボランティア活動がおすすめ

加速度的に進行するデジタル社会の中で、大人の「中二病」の増大は、ある意味で必然ともいえますが、その対策としては、結局バーチャルな世界から抜け出て、現実の人間関係を再体験するしかないでしょう。

具体的には、援助を求めている人を助けるボランティア活動がよいと考えます。なぜなら、バーチャルな世界に現実逃避の居心地のよさを感じている「中二病者」には、報酬を得る代わりに競争が不可欠な「仕事」ではリスクが高すぎて、ついていけないかもしれないからです。

しかしながら、報酬や競争を前提としない「ボランティア活動」であれば、気軽に取り組むことができるでしょう。そして自らが相手から必要とされていることを実感し、また、同時に自らできることの限界も身をもって知る体験の中で、自我が成長し、対人関係を再学習することにもつながります。

自我の成長とは、例えば自分の欲求のみを主張する2歳児の段階を初期とすれば、自分の意見は持ちつつ他者の意見に耳を傾けることができる、つまり自分の感情のコントロールや他者への共感、一言でいえば包容力を増した段階に成長することを意味します。

ボランティア活動は、対人関係の再学習、感情のコントロールや共感能力の向上についてもよい結果を生む体験です。

関西大学が行った調査(2018年度学生生活実態調査報告)では、ボランティア活動で得たものとして最も多かった回答は「多様な人との交流53.4%」であり、次いで「視野の広がり34.2%」、そして「コミュニケーション能力」も26.3%と高い結果になっています。いずれも良好な対人関係の構築に必要なものであり、大人の中二病に欠けているものです。大人の中二病の治し方としてボランティア活動をおすすめする理由です。

ただし、「中二病」現象の根本的な問題解決は、デジタル社会でない、生身の人間に優しい持続可能な社会をいかに作り上げられるかにかかっているでしょう。

もちろんインターネットでの気軽で便利な対人関係と、現実の世界での濃密な対人関係を二つとも上手に構築している若い人は少なくありません。しかし、デジタルの世界が進む一方、濃密な人間関係に直面する現実の世界も存続します。その中で個々人の豊かな人生を考えると、基盤となるのは「生身の人間に優しい持続可能な社会」であり、それを作り上げることが現在強く求められるのだと思います。

心理相談・カウンセリングのスペシャリスト

村田晃さん(うつ心理相談センター東京)

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