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生活保護世帯で「バイト代貯金」が拡大

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生活保護世帯の高校生のアルバイト収入、保護費の減額につなげず

生活保護世帯で「バイト代貯金」が拡大

報道によれば、厚生労働省は、生活保護受給世帯の高校生のアルバイト収入について、保護費の減額につなげず、貯金することを積極的に認める方針を固め、同省は4月1日付で都道府県などに事務次官通知を出したそうです。

生活保護法第4条は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」とし、生活保護法第8条も「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする」としています。

生活保護費のみが源資となった預貯金等において、使用目的が健康で文化的な最低限度の生活保障および自立更生であれば、生活保護費支給の目的や趣旨に反するものではないとし、また、国民感情からも違和感を覚える程度の高額な預貯金ではない限り、生活保護法4条、8条でいう活用すべき資産金銭には該当しないとした裁判例(秋田地裁 平成5年4月23日)などがありますが、このような条件を満たしていない場合、生活保護受給者は貯金が制限されて、貯金の金額が多ければ保護費を減額される扱いとなります。

これまで、生活保護受給世帯の高校生のアルバイト収入についても世帯の収入とみなされ、一定額が保護費から差し引かれる取扱いがされていました。

次世代の生活保護の連鎖を断ち切る点で意義は少なくない

今回の通知では、高校生のアルバイト収入について、運転免許の取得費用や大学の入学金、簿記検定やパソコンの技能講習、引っ越し費用、敷金・礼金、新居での生活用品などに利用する目的であれば、預金しても保護費から差し引きをしないことを認めるとのことです。(ただし、高校生は進路や学習状況を自治体の担当職員と相談し、事前に承認を得る必要があるとされています)

現在、就職活動において、大学等教育が果たす役割は大きく、自立した収入を確保するための重要な要素となっており、次世代の生活保護の連鎖を断ち切る点で、このようなバイト代貯金の意義は少なくないものと考えています。

生活保護制度自体が、不正受給や、保護基準が相当かどうかの問題、受給世帯の使途のモラルなど根本的な議論を要する状況にありますが、バイト代貯金の制度が、正しい用途に利用され、次世代の自立した生活の支援となるよう願うばかりです。

企業法務と事業承継支援の専門家

大西隆司さん(なにわ法律事務所)

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