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大型連休分散化による企業のメリット

星野リゾート、ベネッセなどと連携し、休暇分散化を図る

大型連休分散化による企業のメリット

星野リゾート(北佐久郡軽井沢町)は、4月下旬に始まるゴールデンウイークの休暇分散化で、通信教育大手のベネッセコーポレーション(岡山市)など4社と連携すると発表しました。

大型連休を避けて5月中旬に休暇を取得した4社の社員が、星野リゾートの施設を割安で利用できる仕組みで、大型連休中の混雑や割高な宿泊料金を避けることで社員の余暇を充実させるとともに、停滞していた休暇分散化の論議の活性化を図る狙いです。

ワーク・ライフ・バランスを望むも有給取得率は高くない現状

まず、働く人の願望や有給休暇の取得率の現状について確認しておきましょう。2013年に日本経済新聞が行ったビジネスパーソン調査では、ビジネスパーソンが「非常に重視する」と答えたトップ10では、1位が「休暇の取りやすさ」、2位が「労働時間の適正さ」、3位が「労災予防・ケアの確立」、6位が「メンタルヘルス予防ケア」、10位が「残業が常態化していないこと」でした。働く人の多くがワーク・ライフ・バランスを望んでいるということです。

次に厚生労働省の就労条件総合調査による平成20年~25年までの有給休暇の実態を見てみましょう(従業員数30人以上規模の会社)。有給休暇付与日数は18日、有給休暇取得日数は8.56日、有給休暇取得率は47.6%です。誤解されがちですが、有給休暇は発生要件を満たせば法律上、当然に労働者に与えられる権利です。会社が労働者に与えるものではありません。そして労働時間に比例してパートやアルバイトにも付与されます。

短期的なメリットにとどまらず、社会的評価の上昇も

上記を踏まえたうえで、大型連休を分散化する制度には、どのような影響があるのか考察します。

■コストの抑制
観光業者は大型連休の繁忙に対応するために短期とはいえ労働力を確保する必要が生じます。特定日に来客が集中しないのであれば、採用や教育に掛けるコストおよび人件費などが抑制されるメリットがあります。

■安定収入の確保
観光業は繁忙期と閑散期では売り上げが極端になる傾向が強いです。しかし、来客が分散されることで観光業自体の売上が平準化します。その分、正規雇用者が増える可能性もあります。観光地の経済の安定に寄与するでしょう。

■質の高いサービスが提供できて評判を下げずに済む
繁忙期に業務に精通していないスタッフが応対すれば、ミスやロスが生じやすいもの。サービスを提供する側に慣れているスタッフが多ければミスも起こり難いので、会社の評判を下げるリスクも避けられます。

■社会的評価が上がる
この制度を導入することで企業側がワーク・ライフ・バランスに積極的な企業だと評価されるでしょう。前述の意識調査では、総じてワーク・ライフ・バランスを求めていることがわかります。今は「健康で文化的な生活が送れる賃金と自分らしい生き方」を求める人が若い世代を中心に増えていますので、「連休の時期をずらす」という取り組みをすることで有給休暇の取得率の向上が期待されます。また、人手が少ない時期が生じるため、業務の見直しや効率化が図られ残業削減も期待できるでしょう。そして、残業が減ることで、事故・ケガ・過労死・メンタル不調および労使トラブルといったリスクも低減されます。これらが実現すれば「社員に優しい会社」と評判になるでしょう。

人は、働き詰めではアイデアや気力が出ないものです。休暇は生産性向上のための投資だと考えれば、本件の取り組みは有効だと言えるのではないでしょうか。

「人財」を育て企業の健全な存続を支援するプロ

佐藤憲彦さん(さとう社会保険労務士事務所)

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