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北海道カジノ誘致にひそむ功罪

北海道内で小樽、苫小牧、釧路が積極的にカジノ誘致活動

北海道カジノ誘致にひそむ功罪

カジノを含む統合型リゾート(IR)整備を進める法案が国会に提出され、北海道内でも小樽、苫小牧、釧路の3市が積極的に誘致活動をしていると報道されています。

カジノの誘致は、カジノを目的とした海外・国内からの旅行客を呼び込むことによる経済効果に加えて、カジノ関連の雇用やカジノ周辺の開発などを期待してのものではありますが、反面、ギャンブル依存症や犯罪の増加など地域への悪影響を懸念する声も少なくありません。実際にカジノを認めている韓国では、自国民が入場できる施設で依存症の問題も深刻化しているということですから、その対策抜きにカジノを手放しに歓迎することはできないでしょう。

わが国では、「賭博」は犯罪行為とされていますし、「賭博場」の開設は、賭博を行う行為よりもより重い罪とされているのですが、その法体系との整合性も考える必要があります。わが国で「賭博」が犯罪として禁止されているのは、賭博行為を野放しにしておくと、健全な経済活動や勤労意欲が失われ、副次的犯罪を引き起こす危険もあるからとされています。そのため、刑法の中でも社会的法益に対する罪として分類されているのです。

カジノを誘致する側も、カジノ単体ではなく、カジノを含む統合型リゾート(IR)として、国際会議や学会、展示会などを開ける大型施設、ホテルや劇場、ショッピングモールなどの施設も集める計画を立てて、カジノ=賭博施設という印象を薄めようとしています。

既存の観光客とは異質の旅行者が訪れ、小樽の情緒が失われる?

政府は経済特区制度を利用して特区内でのカジノを認めようという方針のようですが、その目的は、それによって、政府が掲げる「日本を訪れる海外客を2020年までに2000万人に増やす」という目標達成につなげることです。そうすると、仮にカジノの開設が認められるとしても、海外客にとって訪問しやすいという地理的な条件もあるので、前述の北海道の3都市が誘致に向いているかというと懐疑的に思ってしまいます。

特に、小樽市については、カジノを誘致することで既存の観光客とは異質の旅行者が大量に訪れることになるので、それまでの小樽の情緒に魅力を感じていた観光客が離れていってしまうのではないかという危惧もありますので、その辺の功罪も慎重に見極める必要があるのではないでしょうか。

経済破綻した夕張市への誘致も選択肢

また、ギャンブル依存症を防ぐという意味では、自国民の利用を制限するというのもひとつの方策ですが、多くの都市住民の生活圏外に設置するというあり方もあるのではないかと考えています。

パチンコ依存症も同様だと思いますが、依存症になって経済的困窮状態になっても出入りできる施設だから止められないのであって、日常の生活環境から隔絶した地域に施設を設けることによって、この問題をクリアすることもできるのではないでしょうか。たとえば、経済破綻した夕張市にカジノを含む総合リゾートを誘致できたとすれば、新千歳空港からも遠くないし、開発する土地は十分にあるので、立地条件は悪くはないのではないかとも思います。

収益の一部を特別税などの形で社会に還元させる施策も必要

カジノ解禁は、経済特区制度とワンセットに考える必要があります。特区内では国内で一般的に行われている規制を緩和できる(カジノに関しては、条件付で刑法の賭博罪の適用対象からはずす)という仕組みを利用するわけですが、国がカジノ建設を行うわけではなく、民間事業者に許認可を与えて施設の開発・建設を行わせることになるので、財政出動を伴わない景気刺激策になるという意味では、実は一石二鳥の政策でもあるわけです。

その意味で、私もカジノ解禁は政策の選択肢としてあっても良いのではないかと思っているのですが、カジノ事業者に選定される企業は大きな投資をする必要がある代わりに、巨大な利権を手にすることにもなります。したがって、その事業者選定のプロセスに透明性が求められるだけでなく、収益の一部を、カジノによって懸念される治安の悪化や青少年への悪影響の対策費などに充てるための特別税などの形で社会に還元させるといった施策も考えていく必要があるでしょう。

弁護士と中小企業診断士の視点で経営者と向き合うプロ

舛田雅彦さん(札幌総合法律事務所)

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