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校内に「人事委員会」、なぜ問題?

大阪府立学校の約6割で「人事委員会」が決めた案で人事を決定

校内に「人事委員会」、なぜ問題?

先日、大阪府立学校の約6割にあたる学校で、担任や生徒指導部長などの校内人事を、校内の教員で構成される「人事委員会」が決めた案により、校長が任命していたというニュースがありました。これは、大阪府だけに限らず、その他の都道府県でも同様の「人事委員会」が構成され、そこで決まった人事案に基づき、校長が校内人事を決定するというケースがみられるようです。

校長が「人事委」の決定に拘束される場合は、学校教育法に抵触

校内に「人事委員会」を設置することにはどのような問題があるのでしょうか。一見、教員で構成される「人事委員会」を設置し、現場をよく知る教員間で教員の適性や希望を踏まえた上で、担任や生徒指導部長などの校内人事案を決めた方がより実情に即した適切な人事を行うことができるようにも思われるため、このような「人事委員会」の設置にも合理性があるようにも思われます。

しかしながら、学校教育法37条4項は、「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」と定めており、校務に関する決定を校長の権限としています。そして、この校務の中には、校内人事も含まれます。よって、「人事委員会」の校内人事の決定に校長の権限が拘束されるような規定が定められており、実際に校長が「人事委員会」の決定に拘束されているような場合には、学校教育法に抵触することは明らかであると思われます。

「諮問機関」であっても学校教育法の趣旨に照らせば妥当ではない

では、「人事委員会」が校長の「諮問機関」のような立場で人事案を示すだけに過ぎず、校長は「人事委員会」の決定には拘束されないような形であれば、学校教育法には抵触しないのでしょうか。このような「諮問機関」であったとしても、校内に「人事委員会」なるものが存在し、そこで人事案が校長に提出されることは、それ自体が校長の校内人事権限に対する不当な介入と思われますので、校務に関する決定を校長の権限と定めた学校教育法の趣旨に照らせば妥当ではないものと思われます。

したがって、このような「人事委員会」なるものは、校長の権限を法的に拘束するものであろうと「諮問機関」という形のものであろうとも、校務に関する決定を校長の権限を定めた学校教育法と抵触するものとして認められないものと考えられます。そこで、校長は、このような「人事委員会」に干渉されることなく、個々の教員の適性や希望を踏まえた上で、自らの判断で適切な人事を行うことが必要となります。このようにして、校長が自ら人事権を行使することによって、はじめて各々の教員を監督することが可能となり、学校組織を運営することができるのです。

 

西村隆志

中小企業の立場にたった債権回収の専門家

弁護士

西村隆志さん(西村隆志法律事務所)

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