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TPP交渉で透けて見える日・米・豪の思惑

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オバマ大統領訪日も日本側の大幅譲歩を引き出せなかった米

TPP交渉で透けて見える日・米・豪の思惑

オバマ大統領訪日以降も、TPP(環太平洋経済連携協定)の日米二国間関税交渉が足踏みしています。安倍首相は先のOECDにおける基調演説で、「日豪EPA(経済連携協定)大筋合意の意義」と日米協議が最終局面にあることを強調しましたが、関係者やマスコミの間では「いまだ決着には相当の時間がかかりそうだ」との見方が多いようです。

米国は「オバマ大統領が直接乗り込めば、日本側が譲歩し決着する」と高を括っていた節があります。「尖閣諸島は、日米安全保障条約第5条に定める米国の対日防衛義務の対象エリア」と踏み込んだ発言もありました。それにもかかわらず、日本側の大幅譲歩を引き出すには至らなかったのは、何を読み違えたからでしょうか。

豪「早期妥結により当面の数量増を確保した方が得策と判断」

1か月前、7年余りにわたる日豪EPA交渉で争点となっていた、牛肉と自動車の関税問題に大筋での合意が得られました。日本は輸入牛肉に対し、一律38.5%の高率関税を賦課していますが、豪州産牛肉については「一定期間経過後に冷蔵23.5%、冷凍19.5%まで引き下げる」との内容を示しています。

豪州は、これまでかたくなに関税の完全撤廃を要求していましたが、BSE(狂牛病)規制の緩和で米国産牛肉が急速にシェアを回復しつつあるため、「早期妥結により当面の数量増を確保した方が得策」と判断したものと思われます。

見返りに自動車関税5%の撤廃を受け入れましたが、豪州では2017年のオーストラリア・トヨタを最後に、自動車メーカー全ての撤退が決定しています。国内産業保護の見地から、さほど固執する必要性はないのが実情です。

日豪合意を「日米二国間交渉進展の奇貨にしたい」日本

一方、日本側の損得勘定ですが、米豪FTA(自由貿易協定)および豪州・ニュージーランド・東南アジア諸国連合FTAにより、これらの地域からの自動車輸出にはすでに関税が撤廃されています。韓豪FTAで韓国車も同様の取扱いとなります。したがって、日本企業が他国企業と対等条件で戦うには、日豪EPAの早期締結により自動車関税を撤廃することが不可欠となります。

しかし、日本側の狙いが、今回の日豪合意を「難航している日米二国間交渉進展の奇貨にしたい」と考えている点にあるのは疑うべくもありません。牛肉や小麦と自動車、協議の対象品目がおおよそ似通っており、また相互に利益相反関係にあるからです。

外交面での弱腰を批判され、レームダック化がささやかれつつあるオバマ政権ですが、11月の中間選挙を控え、日本側から大幅譲歩を勝ち取り、TPP交渉でのイニシアティブを握ることができれば大きな得点になります。しかし現実には、ほとんど手ぶらで帰国せざるを得なかった。米国大統領訪日の成果としては極めて異例と言えるでしょう。

日豪EPAの大筋合意が、今後のTPP交渉のメルクマールに

TPPの交渉内容は非公開が原則とされ、詳細は公表されません。そのためか、甘利担当相によるフロマン通商代表との交渉結果の説明は、曖昧模糊として解り難いものでした。「進捗はあったものの大筋合意には至らず。ただし妥結に向かう道筋は明確になった。両国にとっても死活問題であり、首脳が協議を加速すれば1~2日でまとまるなら苦労はしない」と苦衷(くちゅう)を吐露しました。いずれにせよ、物別れに終わったことだけは確かな様です。

日本側が米国に想定外に強腰だったのは「日豪EPAが大筋で合意しており、これが今後のTPP交渉のメルクマールになる。簡単には妥協できない」と考えているからでしょう。甘利氏は、今後の日米協議に関して「事務協議が再開されるメドはいまだ立っていない」と指摘。19日からシンガポールで開催される閣僚協議を通じて、牛・豚肉など農産物5項目を巡る関税率やセーフガードに関する米国との妥協点を探る考えのようですが、安保・防衛等に絡めた政治的な決着だけは避けてほしいと思います。

老後に備えた資産形成や不動産活用を顧客目線で考える税理士

松浦章彦さん(<Office MⅡ>松浦章彦税理士事務所)

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