生殖補助医療の法制化、問題点は

 | 弁護士
永野 海

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代理出産などに関する法案、今国会に提出する見通し

代理出産を認める法案、問題点は新聞各紙は、自民党の生殖補助医療に関するプロジェクトチーム(PT)が代理出産などに関する法案をまとめ、今国会に提出する見通しであると報じています。この自民党のPTは、夫婦以外の人間から精子や卵子の提供を受けたり、不妊の夫婦が夫婦の体外受精卵を代理母の子宮に注入するなどの方法で子を産んでもらう「代理出産」など、いわゆる生殖補助医療の法制化を目指し、昨秋から会合を重ねていました。

生殖補助医療は、宗教上又は倫理的な問題点、妊娠・出産の身体的リスクのほか、生まれてくる子の福祉の問題、親子関係(誰を母にするのかなど)の問題、さらには代理母が生んだ子を夫婦に引き渡さなかったり、逆に夫婦が子を代理母から引き取らないなどの実際上のトラブルなど、枚挙に暇がないほどの様々な論点を抱えています。数ある法案テーマの中でも難問中の難問です。

ちなみに、日本産科婦人科学会は、「卵子提供」は法整備がなされない限り認めない、「代理出産」については原則として禁止すべきとの立場を表明しています。

現状、日本では生殖補助医療に関する法律は整備されていない

このような難しい問題について、上記自民党PTは、手元資料をみる限り、当初いずれも限定的に代理出産などを認める3案を提示し議論を続けていたようですが、党内にも代理出産などを全面的に禁止すべきとの意見も強くありました。このため、今後、代理出産を全面的に禁止する法案も併せて提出する可能性もあり、最終的な賛否は、個々の議員の判断に委ねることになるとのことです。個人の思想信条に直接関係してくるテーマですから当然の判断だと思います。

現状、日本では生殖補助医療に関する法律は一切整備されておらず、関連団体がガイドラインなどを定めるにとどまっています。したがって、日本で卵子提供や代理出産を行っても、罪に問われることはありません。このため、それほど数は多くありませんが、これらの生殖補助医療の実施を公言している医療機関もいくつかあります。

かなり踏み込んだ内容の今回の法案、様々な修正が予想される

今回の法案では、夫婦以外の人間の精子、卵子を使った人工授精や体外受精などを「特定生殖補助医療」と定義し一定の要件の下で法律で認めるほか、代理出産について、妻に先天的に子宮がなかったり、手術で子宮を摘出していた場合などの限定はあるものの、国が指定する医療機関で実施を認めるなど、かなり踏み込んだ内容になっています。親子関係については、子を出産した者を「母」とするようです。他方で、法が認めない方法により生殖補助医療を行った場合の罰則も定められる見通しで、長年、曖昧にされてきた問題に一応の白黒をつける内容になっています。

テーマがテーマですし、法案自体の内容も踏み込んだものになっていますから、仮に今国会で法案が提出されても、すんなり可決成立とはいかないでしょう。様々な修正が施されることが予想されます。また、生殖補助医療により生まれてきた子が自らの出自を知る権利を保障するための情報開示制度の整備についても議論は残されています。

国民一人一人にとっても大きく意見が分かれる大変難しいテーマです。今後の国会での審議経過に注目が集まります。

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