「残業代ゼロ法案」に未だ残る懸念材料

 | 社会保険労務士
松本 明親

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時間ではなく「成果で評価」。「働き方改革」が求められている

「残業代ゼロ法案」に未だ残る懸念材料今、働き方が大きく変わろうとしています。現在、一般の業種では原則として「1日8時間、1週間40時間まで」しか労働させてはならず、それを超えて時間外労働や休日労働をさせれば「割増賃金」を支払わなければなりません。

時間管理になじまないデザイナーや編集者などの専門業務や、事業の企画立案などの業務であれば「裁量労働制」を導入することができますが、かなり限られています。現在では様々な働き方があるため、時間ではなく「成果で評価される」という、いわゆる「残業代ゼロ法案」が検討されています。この背景には、グローバル化のさらなる進展や少子高齢化、人口減少社会の到来の中で、「働き方改革」を早急に取り組むことを求められていることがあります。目指すべき方向として、女性や高齢者を含む全員参加型の労働生産性の向上があります。

「残業代ゼロ法案」修正で、年収要件は撤回され幹部候補が対象に

政府の産業競争力会議で5月に提言された「残業代ゼロ法案」は、対象となる労働者を「業務遂行、労働時間等を自己管理し成果を出せる能力のある労働者」に限定。さらに原則として、労働者の過半数が入る労働組合を持つ企業に限定し、労働条件は労使合意したものを労働基準監督署に届け出るものです。

また、この制度の対象とするためには、本人の同意が必要になります。4月に提言された当初案では、年収1000万円以上の労働者や一般社員も対象とされていましたが、年収要件は撤回され幹部候補が対象とされています。健康確保のために「労働時間の上限」「年休取得の下限」を導入することも考えられています。この制度では、時間は関係ないので短時間であっても成果が出せれば報酬を確保することができます。

労働生産性の向上のメリットの裏で懸念すべき問題点が

現在の労働基準法は、工場労働者を前提に昭和22年に制定されたもので、大きく改正されることはありませんでした。しかし、現在では様々な職種や働き方があるので、それに合わせた法改正が必要でしょう。ただ、次のような懸念材料もあります。

①成果を正当に評価できるのかどうか?
仕事の内容や役割分担が不明確で、チームで行うことが一般的であるため、どれだけ成果を上げたのか評価しにくいという問題があります。
②恣意的に対象者とされないか?
対象範囲に幹部候補と明記されていますが、新入社員であっても恣意的に「将来の幹部候補生」とされ、「残業代ゼロ」で長時間労働させられることも考えられます。
③本人の同意が強制されないか?
本人の同意が必要になりますが、人事評価が悪くなるのを恐れ、同意させられることも考えられます。
④サービス残業の増加
所定労働時間の概念がなくなるので、24時間いつでも会社から呼び出されれば対応しなければならず、サービス残業の温床となる可能性があります。

同じ仕事でも効率的に早く終わらせるより、「時間をかけて残業をする方が、給料が多い」という不公平をなくすことは期待できます。国の基準を明確にし、企業にとって恣意的な運用をさせない仕組みづくりと、労働法を守らない悪質な企業にはきちんと取締りをする体制が必要となるでしょう。

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