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「沖縄独立」の主張に内乱罪は適用されるのか

内乱罪が成立するには「暴動」の要件を満たす事実が必要

「沖縄独立」の主張に内乱罪は適用されるのか

今年11月に実施予定の沖縄県知事選に、琉球国独立(沖縄独立)を政策として主張する人が出馬するとの報道がありました。この報道を受けて、ある作家が「内乱罪になる」などとツイッターで述べて、ちょっとした話題になっています。そのツイートでは、沖縄独立の主張をして県知事選の活動をすることに内乱罪が適用できるなどと述べていたようです。

内乱罪は、刑法77条に定められた犯罪で、その首謀者は死刑か無期禁錮刑に処せられる重い罪です。群衆を指揮した者や暴動の参加者も処罰されます。内乱罪が成立するのは、「日本の統治機構を破壊する」「日本の領土内で国家権力を排除して不法に権力行使したりする」など、日本国憲法に基づく国家組織を不法に破壊する目的で暴動を起こした場合です。そして、暴動とは、多数人が結合して暴行・脅迫を内容とする行動をすることです。この目的の暴動を行う具体的な合意があって、暴動の実行に至らない場合は、内乱陰謀罪(1年以上10年以下の禁錮。刑法78条)となります。また、内乱罪・内乱陰謀等罪の幇助をした場合は、内乱等幇助罪となり(7年以下の禁錮。刑法79条)、内乱罪等の扇動や教唆についても処罰されます(破壊活動防止法38条)。

内乱罪や内乱陰謀罪が成立するには、「暴動」の要件を満たす事実が必要です。沖縄独立の政治的主張をするだけでは「暴動」とはいえません。また、国からある地域が独立する過程で必ず暴動が起こるとは限りませんし、独立を主張するだけで暴動が起きるわけでもありません。例えば、沖縄とは経緯・事情が違いますが、9月18日にはスコットランドでイギリスからの独立の是非を問う住民投票が暴動もなく実施されようとしています。したがって、沖縄独立の主張をしたというだけでは、内乱罪や内乱陰謀罪が成立しません。暴動の共謀というのではなく、沖縄独立の主張を支持者と議論するくらいで内乱陰謀罪が成立するというのは、刑法の規定を無視した空理空論でしょう。

内乱罪などと威嚇するのではなく、冷静に言論によって批判すべき

なお、沖縄独立の主張をしている人は、中国韓国の軍隊を沖縄に置くという主張もしているようですから、外患誘致罪(刑法81条)についても話題になるかもしれません。 外患誘致罪は、外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた場合の罪で、刑罰は死刑のみです。これの未遂罪や予備・陰謀罪、教唆罪も処罰されます。ただ、日本の領土である沖縄に外国の軍隊を不法に侵入させるような謀議をその外国としているわけではなく、一方的にそのような主張をしているだけであれば、通謀がないため、これらの犯罪は成立しません。

沖縄県外の出身で沖縄在住の私としては、沖縄独立の話を聞くと、「内乱になる」とまでの豊かな想像力はありませんが、独立することになったら日本国の法制度で保障された財産はどうなるのか、県外出身者は国外退去か収容所送りになるのかといったことを空想してしまい、多少は心配な気もします。

しかし、気に障る主張であっても内乱罪などと威嚇して騒ぐべきではありません。論じる必要のある問題であれば、冷静に言論によって批判すれば良いと思います。

中小企業をとりまく法的問題解決のプロ

林朋寛さん(北海道コンテンツ法律事務所)

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