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秋の大型連休推進、労務管理視点の評価は

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秋の大型連休構想、「いらぬお世話」と冷ややかな反応も

秋の大型連休推進、労務管理視点の評価は

内閣府の休み方改革ワーキンググループで「秋の大型連休創設」が討議されています。既存の秋分の日や体育の日などの秋の祝日と有給休暇を組み合わせて、ゴールデンウィーク並みの大型連休を作り出すそうです。

他の先進国と比べた日本人の労働時間の長さや有給休暇消化率の低さを懸念し、国が主導して大型連休を創設し、もっと国民に休暇を取ってもらおうという趣旨のようですが…。私もきっと学生の頃なら大歓迎だった、この「秋の大型連休構想」。政府の思惑とは違って、労働者側からは「いらぬお世話」などと冷ややかな反応が出ているようです。

恩恵を受けるのは「大型連休をきっちり気兼ねなく取得できる人」

秋の大型連休が実現した場合、どのような影響があるのでしょうか。考えられることは、長期旅行や遠方へのレジャー需要が増えることでしょう。関連する交通・観光・飲食業への売上向上には貢献できるかもしれません。また、旅行などへ出かけなくとも、長期休暇を取れることで精神的な余裕が生まれ、労働者のメンタルヘルス向上にも一役買うことになるかもしれません。

ただ、これらの恩恵は、あくまでも「大型連休をきっちり気兼ねなく取得できる人」にだけもたらされるものだと言えます。結局は「公務員にしかメリットないよね」なんていう声も聞かれるほどです。

大型連休のしわ寄せは労務管理上も看過できない

働く人なら多かれ少なかれ経験していることだと思いますが、いわゆる年末年始やお盆休みなどの長期休暇前には、休み前に片付けようとして、普段より仕事量が増えることが多々あります。これが秋にも発生することになるのです。ただでさえ、コスト問題や労働力不足の影響から、企業の人員は極限まで削減されています。普段でも少ない人数でギリギリ回している仕事が、休みを取るためにさらに過酷な状態になるといった本末転倒が生まれかねないのです。休み前後の時間外労働が今よりも増えるのは目に見えています。大型連休のために労働負担が増えることは、労務管理上、好ましいことではありません。そもそも休みが取れるとは限らず、「世間は大型連休だけど、自分は仕事」という人も多数出てくるでしょう。

また、大型連休創設が観光やレジャー産業に良い効果をもたらすとはいえ、その業界で働く人の仕事量はその分、増えることになります。さらに言えば、多くの人が一斉に休暇を取っても、観光地などはどこも人がいっぱいで、のんびり楽しむことは難しいでしょう。休暇の分散化が進んでいる中で、あえて大型連休を創設すること自体がナンセンスだと言えるかもしれません。

休暇を取りやすい仕組み作りを推進していく方が、よほど有意義

「休暇を取る=同僚に迷惑をかける」といった意識が根強い日本では、欧米のように長期休暇を取って家族でバカンスなどといったスタイルは、まだまだ受け入れられません。労働時間という数字だけを取り上げて、現場の実態を考慮せず、「休みを取れ」と主導したあげくに生産能力が低下しては、国力そのものが弱体化してしまいます。

祝日を移動させてまで国が無理に大型連休を作るのではなく、一人一人が自分の仕事やライフスタイルに合わせて休暇を取りやすい仕組み作りを推進していく方が、よほど有意義ではないかと考えます。

人事労務コンサルティングの専門家

大竹光明さん(社会保険労務士法人大竹事務所)

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