性犯罪者に「化学的去勢」の是非

 | 心理学博士・臨床心理士
村田 晃

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性犯罪の刑罰に「去勢」を加えるべきか?

性犯罪者に「化学的去勢」の是非幼児や子どもへの性犯罪が止まない中、刑罰に物理的に性器を切除する「去勢」を加えるべきとの議論が起きています。性犯罪は事実上、圧倒的に男性が加害者であることから、
性犯罪に対する刑罰として男性器を切除する「去勢」の議論が出てくるのも不思議ではないでしょう。

しかしながら、物理的な去勢は、憲法36条に規定する残虐刑の禁止に抵触するため、いわゆる「化学的去勢」の是非が検討されています。「化学的去勢」とは、男性ホルモンの一種であるテストステロンを抑制する抗男性ホルモン剤の投与により性的欲求を抑制する薬物療法で、一部の国ではすでに取り入れられています(ポーランド、ロシア、エストニア、韓国、米国カリフォルニア州など)。

「化学的去勢」は刑罰ではなく、治療法の一環としての位置づけ

多くの国では「化学的去勢」は刑罰としてではなく、「処遇」として位置づけられています。つまり、性犯罪者の再犯防止のための処遇プログラムのひとつとして、思考の歪みを直す心理療法としての認知行動療法と同じく、治療法の一環(薬物療法)としての位置づけです。ただ、その再犯予防効果については、まだはっきりとした結論が出ていないのが現状です。

なお、性犯罪者に対する処遇プログラムについては、日本の法務省もすでに2006年より受刑者や保護観察対象者に対し実施しており、その内容は認知行動療法などの心理療法が中心です。「化学的去勢」という薬物療法の導入については、副作用の問題や有効性の効果検証の困難さから、なお検討中のようです。

ただし、この「化学的去勢」は、性衝動を自分で抑制できない一部の性犯罪反復者への処遇のひとつとして考慮の可能性はあるといえます。

今、考慮すべきは現行の刑罰の徹底化と厳罰化

しかしながら、私は今現在、考慮すべきは、新しい方策の導入よりも現行の刑罰の徹底化と厳罰化と考えます。それは、「100人中97人の性犯罪者が何の処罰も受けていない」との米国の調査結果がある(米国の反性犯罪団体RAINNによる)ように、性犯罪は警察に届けられない「暗数」の多い犯罪であるからです。また、仮に被害者が勇気を持って警察に届けても、捜査や裁判の過程で被害者は辛い被害体験を追体験させられることを迫られます。この被害者が、いわば泣き寝入りしがちな事態が、性犯罪の加害者の再犯を増長させている大きな一因と考えます。

現在の緊急の課題の一つは、性犯罪の被害者が警察に届けやすくすること、そして、性犯罪者を見逃さず性犯罪の検挙率を上げること、また、捜査・裁判の過程での被害者のプライバシー保護です。

そして、もうひとつは、被害者の立場に立った厳罰化です。私は常々、性犯罪に対する日本の刑罰は軽すぎると感じています。ちなみに米国連邦法では、多くの強姦罪は刑期の上限が無制限となっています。一方、日本の刑法では、強姦に対する刑は20年以下の有期刑です。被害者側に立った刑罰の観点から、この懲役刑をさらに引き上げることが必要と考えます。

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