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18歳引き下げ検討の選挙権と、同列には語れない少年法

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先進国で選挙年齢が18歳以上になっていないのは日本だけ

18歳引き下げ検討の選挙権と、同列には語れない少年法

自民、公明、民主、維新など与野党は、今月、国民の選挙権を18歳に引き下げる公職選挙法改正案を再提出することを決めました。今国会中に成立すれば、早ければ来年夏の参議院選挙から適用されます。

選挙年齢の問題に関しては、昨年6月に成立した改正国民投票法が、投票年齢を4年後に18歳以上とすると明記しています。このため、現在20歳以上と定める公職選挙法の選挙年齢との整合性が議論されており、今回の公職選挙法改正の動きはこの流れの中にあります。

選挙権を18歳以上とすることについては、賛成反対さまざまな意見があるでしょう。しかし、日本ではあまり知られていませんが、世界の大半の国の選挙権は18歳以上です。割合でいえば実に世界の90%以上。しかも、先進国に限っていえば、選挙年齢が18歳以上になっていないのは日本だけです。世界的に見れば、選挙権が18歳以上に与えられることはごく普通のことです。

若者も等しく納税する者としての意思表明が大切に

投票年齢引き下げの効果を考える前に、選挙権がそもそも、誰に政治を委ねるかを決める国民の極めて重大な権利であることを忘れてはいけません。本来なら、若者側から「選挙権を与えろ!」という運動が起こることもあり得ますが、そこは日本のお国柄と時代でしょう。むしろ、選挙権を得る若者の側が冷めた目で見ているところがあります。

しかし、日本は超高齢化社会の国です。年々、高齢者の割合が増加しています。元来高齢者の投票率が相対的に高いこともあり、益々選挙は高齢者の意思が反映されやすい場になっています。こうした状況で、高齢者に有利な政策がなされやすいことを「シルバー・デモクラシー」といいますが、若者も等しく納税する者として、選挙での投票を通じて、しっかりと意思表明することが大切です。

少年法との関係が懸念材料に

選挙権が18歳以上になっても、選挙での効果は未知数です。もともと20代の投票率は低く、今回の改正案で増える有権者が240万人といっても全体から見れば2%程度に過ぎません。それでも、比率的にはマイノリティーになってしまっている若者が声をあげることで、議論が生じ、変化につながり得ます。これこそ、民主主義です。今は具体的効果が未知数であっても、選挙権の年齢引き下げは大いに歓迎されるべきものと考えます。

一方、今回の改正案には懸念材料もあります。少年法との関係です。今回の改正案では、18歳以上の未成年者が買収などの重大な選挙犯罪を行った場合には、成人と同様に処罰しようという動きがあります。また、一般に選挙年齢を引き下げる以上、少年法における「少年」の定義も18歳未満に引き下げるべきとの意見も根強くあります。

少年法改正は可塑性を踏まえた慎重な判断が求められる

個人的には、選挙権の年齢と少年法の年齢は全く別次元の問題だと思います。選挙権を与える以上、少年法による保護からも外すべきという議論はかなり乱暴です。

少年法に関しては、少年による殺人などの重大事件が起こる度に、厳罰化や法改正の議論が巻き起こります。もちろん、少年を20歳未満とする論理的必然性はありませんから、少年にも成人と同じ処罰を求める世論などが契機となり、今後法改正されることもあり得るでしょう。

また、選挙年齢と同様、世界の例でいえば、少年法の対象を18歳未満に限定している国は多数あります。しかし、公職選挙法を改正した以上、少年法も18歳未満にというような安易な議論や流れだけは避けなければなりません。少年法改正には、少年の可塑性についての議論を踏まえた慎重な判断が別途必要だと思います。

交通事故と債務問題のプロ

永野海さん(中央法律事務所)

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