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企業の「顔採用」法律は許している?

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東急エージェンシーが「顔採用」を打ち出した

企業の「顔採用」法律は許している?

広告代理店の東急エージェンシーが2016年新卒採用サイトで「顔採用」を打ち出したことで、各方面に衝撃が走っています。

東急エージェンシーによると、顔のつくりで採用の可否を決めるわけではなく、自社が開発した独自のシステムによって「のんびり顔」や「心配性顔」などに分類し、それぞれの特徴や性質にあった採用を行うため、と説明しています。

しかし、上記とは直接関係ありませんが、人事担当者の70%が「顔や容姿が優れていれば採用する」と回答している調査結果も出ていますので、東急エージェンシーの実際の運用は注視したいところです。

容姿での採用を制限する根拠はない

労働法で採用などに関する規定があるのは、労働基準法、雇用対策法、職業安定法、男女雇用機会均等法です。それらの中で規制しているは、国籍、信条、社会的身分、解雇、災害補償、安全衛生、年齢、以前の仕事、労組加入状況、性別などです。容姿での採用を制限する根拠はありません。

また、「使用者は、労働者雇入れの自由を有するため、その者の思想、信条、を理由として採用を拒否することも許されます」(三菱樹脂事件)という判例にある通り、「雇入れ」は労働条件ではありません。なぜならば、労働条件とは雇用された後の話だからです。

顔の良し悪しで採否が決まるのは好意的に受け止められない

俳優、女優、モデルなど、芸術芸能分野に就く場合であるならば、顔や容姿での採用は理解されますし、年齢制限の規定もかかりません。しかし、一般の企業で仕事を行う上で、どこまで顔が重要なのでしょうか?顔が良いから、美人だからといっても、個々人で好みが違いますし、必要以上に顔にこだわるのはどうかと思います。

また、顔の良し悪しで採否が決まるということが世間に知れ渡れば会社の評判はどうなるでしょうか?好意的に受け止められないのは明らかです。入社した人にも相当なプレッシャーがかかります。加齢とともに顔や容姿は衰えるため「いつまでもこの会社にいられない」と不安に駆られるでしょうし、人材が定着しない会社になってしまう恐れがあります。

法律は「年齢以外の制限をかけて良い」とは言っていない

では、就業の機会の確保という点から見ると、どうでしょうか?採用の可否を顔で判断することを禁ずる法律はないと前述しました。しかし、雇用対策法第10条には「労働者の募集及び採用について、その年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならない」と規定があります。

芸術芸能分野など、一定の条件に該当する場合は年齢制限をかけても問題ありません。しかし、「年齢以外の制限をかけて良い」とは言っていないのです。東急エージェンシーが「顔採用」を始めたからといって、内容をよく理解せずに真似をすることは危険です。

欲しい人材(want)を明確にするのは当然として、絶対に譲れない条件(must)も明確にして実りのある採用活動を行いましょう。採用は、会社の未来を決する重要な戦略であることをお忘れなく。

「人財」を育て企業の健全な存続を支援するプロ

佐藤憲彦さん(さとう社会保険労務士事務所)

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