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なぜ?コンビニ店主が「事業主」ではなく「労働者」のワケ

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コンビニ店主は労組法(労働組合法)上の「労働者」

なぜ?コンビニ店主が「事業主」ではなく「労働者」のワケ

平成27年4月16日、「コンビニ店主は労組法(労働組合法)上の労働者である」との命令が交付されました。加盟者(ファミリーマート、以下「ファミマ」店主)が、会社(ファミマのフランチャイザー)に「再契約の可否を決定する判断基準」をテーマとする団体交渉を申し入れた件で、会社が団体交渉に応じる回答をしなかったことから、労働委員会に救済を求めました。

都労委(東京都労働委員会)は、「加盟者は労働者であるため上記テーマの団体交渉に応じなければならない」との命令を交付しています。セブンイレブンの店主に続いて2件目(2014年3月岡山県労委)で、これは「正当な理由のない団交拒否(労組法7条2号)」と「労組法上の労働者性(労組法3条)」がテーマとなっています。では、何を根拠に労働者性が認められたのでしょうか。

労組法上では当事者の認識や実際の契約の運用などを重視

平成23年7月、厚生労働省の労使関係法研究会において、労組法上の労働者性の判断基準が報告されています。具体的には、A.労働者の事業組織への組み入れ、B.契約内容の一方的・定型的な決定、C.報酬の労務対価性の3つを基本的な要素に、またD.業務依頼に応ずべき関係、E.広い意味での指揮監督下・時間的場所的拘束の2つを補足的要素に、F.顕著な事業者性の点を消極的要素(強ければ労働者性が否定の方向に)として、基本的にはこれらを総合勘案して判断するとしています。

セブンイレブン同様ファミマの事案においても、この判断基準が拠り所となっています。一般に、労基法(労働基準法)上の労働者性が指揮監督下の労務提供や時間的場所的拘束の有無を柱に検討がなされるのに比べて、労組法上の労働者性は、「当事者の認識や実際の契約の運用などを重視する」との考え方をベースにしており、上記のAやBの判断要素に如実に現れています。

フランチャイズ契約の形式でも実態は労働者に該当すると判断

前項Aについて、ファミマ・システムでは加盟者の労務提供なしには機能せず、加盟者は会社の業務遂行に不可欠で枢要な労働力として組織に組み入れられている、Bについて、同一・統一的なシステムのもと、定型的な契約を余儀なくされている、Cについて、加盟者の得る金員は、労務提供の対価、それに類する収入である、Dについて、会社の指示・助言等に従わない場合に再契約を拒否される不安から、加盟者は個々の業務依頼に応じざるを得ない状況にある、Eについては、基準通り判断され、Fについて、独立した経営判断に基づいて収益管理を行う機会が実態として確保されているとは認めがたいとして、顕著な事業者性を否定しています。

上記6つの要素が労働者性を示しているとされ、結果、フランチャイズ契約の形式であっても、実態としては労組法上の労働者に該当するとされたものです。

今回の事案で、コンビニ店主の実態が浮き彫りに

今回のファミマの事案では、アルバイトと変わらない業務実態、収益構造から、オーナーが働かなければ成り立たない仕組み、準委任契約なのにオーナーにほとんど裁量権がないなど、あらためてコンビニ店主のオーナーの実態が浮き彫りになったと言えます。

この件では、フランチャイズ契約の再契約の可否の基準は、組合員の生計維持に直結する労務提供ないし就業機会継続の可否にかかるものであるから、労働条件ないし経済的地位に関する事項であることを理由に、義務的団交事項にあたるとの結論が出されています。コンビニ店主の労組法上の労働者としての地位が確固たるものとなれば、労基法の時間規制などの適用はないものの、団交によって、オーナーの働き方や契約更新に関する不利益など労働条件や経済的地位が見直されることにつながると考えられます。中労委(中央労働委員会)の再審査に注目したいと思います。

労務全般の助言と支援、リスク予防と対策を得意とする特定社労士

亀岡亜己雄さん(首都圏中央社労士事務所)

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