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甘く見るな!いじめ加害者に課せられる法的責任

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名古屋市内の専修学校で集団によるいじめが確認される

甘く見るな!いじめ加害者に課せられる法的責任

2015年7月15日、名古屋市内の専修学校で16歳の男子学生が、同級生5人から耳たぶに無理やり画びょうを刺されるなどのいじめを受けていた事案が報道されました。いじめを受けた生徒が自殺するといった悲しいニュースなど、昨今ではいじめのニュースが絶えません。

昨年10月に発表された文部科学省による調査によれば、平成25年度の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は、18万5860件にも及んでいます。内訳では、小学校が11万8805件と最も多く、中学校、高等学校、特別支援学校と続きます。また、いじめを認知した学校数は実に2万校を超えています。これは、全学校数の半数以上に上る数です。

暴力行為事案は中学校が全体の7割を占める

暴力行為の発生件数に限っても、調査対象の1年間に5万9345件に達しており、背後にあると思われる認知されていない暴力行為の数を考えれば、恐ろしくなる数字です。なお、暴力行為事案については、中学校が全体の7割近くを占めていることが目を引きます。

冒頭の事案では、加害者の少年5人(いずれも16歳)が暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されました。いじめの代償は、決して小さくありません。いじめと表現される行為であっても、他人に対して暴力行為を働く以上、当然に、暴行罪や傷害罪などの刑法の構成要件に該当する行為となるのです。

本件は加害者が16歳の事案でしたが、暴力行為等処罰法違反(集団暴行)の容疑で逮捕までされています。この法律は、集団による暴行事案などの場合に、刑法が定める暴行罪よりも法定刑を重くしており、捜査機関がこの事案を集団で暴行を加えた事案として重く見ていることがわかります。今後の捜査の展開次第では、傷害罪の適用や、暴力行為等処罰に関する法律における常習的な傷害事案の適用も検討される可能性があるでしょう。

11歳や12歳であっても少年院送致がなされる可能性がある

一般に、16歳の少年がこうした犯罪で逮捕された場合、原則的には少年法が適用されるため、刑事裁判にかけられ懲役刑などが課せられることはありません。しかし、重大事案など、家庭裁判所が「刑事処分が相当」と判断した場合には、少年を検察官に送致(逆送といわれます)することも可能です。この場合には、成人事件と同様に扱われることになります。また、小学生の暴力事件であっても、加害者が11歳、12歳に達していれば、事件の悪質性などの事情により少年院送致がなされる可能性も十分にあります。

いじめの加害者の中には、誤った法律知識や思い込みをもとに、いじめによって被害者を暴行し、怪我を負わせても逮捕まではされないだろうと考えている人間がいるかもしれません。しかし、冒頭の事案が示すように、そのようなことは全くないのです。学校関係者は、生徒に対していじめを行った場合には、11歳、12歳であっても少年院送致がなされる可能性があること、14歳以上であれば逮捕されることも十分あることなどを、理解させる教育が求められます。

交通事故と債務問題のプロ

永野海さん(中央法律事務所)

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