池袋の暴走事故に集まる、持病に対する偏見への警鐘

 | 弁護士
林 朋寛

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東京・池袋駅前で乗用車の暴走で死傷事故が発生

池袋の暴走事故に集まる、持病に対する偏見への警鐘東京都豊島区のJR池袋駅東口で乗用車が歩道に突っ込み、歩行者5人が死傷した事故で逮捕された男性医師にてんかんの持病があり、定期的に通院していたとの報道がありました。しかし、捜査中の警察発表の情報を鵜呑みにするのは早計で、この報道がてんかん患者への偏見に繋がらないよう注意する必要があります。

そもそも、持病としててんかんを持つ人に対し、運転を一律に禁止する法律はありません。道路交通法では、発作により意識傷害などをもたらす病気を持つ人に運転免許を交付することを、拒否または保留できるとされています。その対象となる病気は道路交通法施行令で、てんかんや無自覚性の低血糖症などが指定されています。道交法についての警察庁の運用基準では、発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合などは、免許の交付を拒否等されないことになっています。

この拒否事由に当たるかどうかについて、免許申請や更新の際の質問票に回答する必要があります。この質問票に虚偽の記載をして提出すると処罰(1年以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象になります。運転免許を受けた後にこのような病気にかかっていることが判明したときは、免許取り消しや停止の対象になります。

自動車運転死傷処罰法で処罰され得る

今回のようにてんかんの発作を抑える薬を飲まずに運転中に発作を起こして他人を死傷させた場合は、平成26年5月20日に施行された自動車運転死傷処罰法で処罰され得ます。

政令で指定された病気(てんかんなど)の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で自動車を運転していた結果、その病気の影響により正常な運転が困難に陥り、人を負傷させた場合は12年以下の懲役、死亡させた場合は15年以下の懲役となります(危険運転致死傷罪)。さらに、このときに無免許運転だった場合は刑が加重され、負傷で15年以下の懲役、死亡で6カ月以上20年以下となります。

全体的な状況や統計について冷静な検証が必要

発作を抑える薬を飲んでいなかったということは、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態だったことを認識して運転していたということに繋がりますので、故意犯である危険運転致死傷罪に問われることになります。もし、そのような状態であったことを認識していたとまで言えないのであれば、過失運転致死傷罪(7年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金)に問われることになるでしょう。

服用すべき薬を服用せずに運転していたという事情は、有罪となった場合に課される刑を重くする事情になると考えられます。重大な死傷事件があったことから、病気が原因の場合を含め、自動車による死傷事件は厳罰化されています。ただし、単に病気の人が運転したから処罰されるということではありません。あくまで正常な運転ができなくなるかもしれないことを認識し、運転することを禁止しようとしているのです。

交通事故の原因として、てんかんなどの病気よりも、他の病気や飲酒による運転の方が危険性は高いといった議論もあるようです。てんかん患者の運転を禁止すれば良いという意見は短絡的でしょう。また、厳罰化や運転の禁止といった施策だけでは、危険な運転を無くすことはできません。事故をより減少させていくためには、全体的な状況や統計について冷静な検証が今後も必要だと思います。

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