全国初「未熟運転致死」の罪で少年を起訴、運転技能の有無がポイントに

 | 弁護士
藤本 尚道

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無免許で死亡事故を起こした少年を「未熟運転致死」の罪で起訴

全国初「未熟運転致死」の罪で少年を起訴、運転技能の有無がポイントにこの8月、兵庫県尼崎市で無免許の少年(16歳)が運転する自動車が自転車の男性(80歳)をひき逃げして死亡させた事件につき、大阪地検は少年を「自動車運転処罰法違反」として「未熟運転致死」の罪で起訴しました。地検によると、昨年5月施行された改正法に基づき「未熟運転致死」の罪で起訴されるのは全国初とのことです。

交通事故で人を死傷させた場合、通常は「過失運転致死傷罪」が適用されますが、アルコールや薬物の摂取、スピード違反、妨害運転、信号無視といった悪質かつ危険な自動車運転で人を死傷させた場合には「危険運転致死傷罪」が適用されることになります。「未熟運転致死傷罪」は、この「危険運転致死傷罪」の一種であり、自動車の進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、人を死傷させた場合に適用される罪です。

運転免許の有無ではなく、運転技能の有無だけが問題

ここで問題となるのは、「(自動車の)進行を制御する技能を有しない」という要件の解釈です。一般的には、運転免許を取得したこともなく運転の技能を有しない人が自動車を運転して人を死傷させた場合が典型例と言えるでしょう。ところが「無免許」であっても、日常的に自動車を運転するなどしていたため「運転技能を有する」と判断される人の場合はこの要件に該当しません。

つまり、「自動車の運転技能を有するか否か」が唯一のポイントであり、その意味では、たとえ運転免許を持っていても、長らく「ペーパードライバー」を続けてきた人の場合には「運転技能を有しない」と判断される可能性があります。

他方で、運転の経験や技能はあるものの、免許停止中だったり、免許が取り消されて無免許になってしまった人の場合はこの要件に該当しないことになります。要するに、運転免許の有無ではなく、運転技能の有無だけが問題とされるわけです。

「10年以上15年以下の懲役」という量刑が最も厳しい判決

この少年は大型のワンボックスカーを運転していましたが、少年はこのような大型の車を運転した経験がなかった旨を供述しています。現場付近の防犯カメラにも、少年が左折する際にハンドル操作を誤り、道路右側の建物に衝突した後、自転車に乗っていた男性をはねた状況が記録されていた模様です。このような事情をふまえ、大阪地検は「自動車を制御する技能が極めて未熟だった」としたうえで、公判維持が可能と判断し、全国初の「未熟運転致死」での起訴に踏み切ったものです。

未熟運転致死罪で有罪になると20年以下の懲役に処せられますが、少年を「実刑」に処する場合は、「不定期刑」にする必要があります。例えば「被告人を懲役5年以上10年以下に処する」という判決主文になるわけです。さらに、少年法により短期と長期にそれぞれ「上限」が設定されていますので、本件では「10年以上15年以下の懲役」という量刑が最も厳しい判決になります。

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