「落ち着け」は厳禁?「不安障害」患者への対応注意点

 | 心理学博士・臨床心理士
村田 晃

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過剰な不安や心配が持続して日常生活にも支障を及ぼす

「落ち着け」は厳禁?「不安障害」患者への対応注意点「ただ落ち着くなんてできない(I can’t “just relax.”)」。これは、ある不安障害の米国人が書いたブログの一節ですが、不安障害の人にとって言葉だけの「落ち着け」のアドバイスは役に立たないどころか、逆に不安を高めることを意味しています。それでは、不安障害の人に対し、周りの人々はどう対処すればいいのでしょうか。

まず、不安障害とは何かについて簡単に説明します。簡潔に言えば「過剰な不安や心配が持続し、日常生活に支障を及ぼす状態」と定義できます。具体的には社会的場面や乗り物などで起きる反応です。この定義で大事なのは、「過剰」と「持続」、そして「日常生活に支障」という点です。というのは、不安自体は問題になりません。なぜなら、不安はストレスに対するごく普通の反応だからです。それどころか、逆に不安は人が生きていく上で、なくてはならないものともいえます。ちなみに進化心理学では、不安・恐怖は危険を察し回避する反応として、人間が生き延びるために必要なものととらえています。

欧米諸国は日本に比べ不安障害の患者数が非常に多い

不安障害の人の統計(推計患者数)については、日本では全人口の5.5%(12カ月有病率)、9.2%(生涯有病率)との厚労省の研究(平成18年度)があります。一方、米国では18.1% (12カ月有病率)、ヨーロッパ(EU)では14.0% (12カ月有病率)との統計があります。明らかなのは、欧米諸国が日本に比べて不安障害が非常に多いということです(米国では精神疾患の第1位)。

不安障害の原因は、いまだにはっきりとは分かっていませんが、身体的要因、心理的要因及び社会的要因が相互に関わっていると考えられています。ここでいう身体的要因とは、脳神経回路の過活動など脳機能の異常などであり、心理的要因とはストレスなどで、社会的要因とは文化や価値観などです。例えば、いわゆる「対人恐怖症」は日本人に特徴的な恐怖症と位置付けられています。

過剰で持続する不安に対しては医学的な対応が必要

先に述べたように不安が過剰で持続し、仕事や学業、家事などの日常生活に支障が出てくれば、その時は専門家(精神科医など)に援助を求めるのが一番いい方法といえます。不安障害への対処法として、米国国立精神衛生研究所(NIMH)などの専門家は、薬物療法(抗うつ薬・抗不安薬)と心理療法(認知療法・行動療法(曝露療法)・マインドフル瞑想)を挙げています。そのほか、いわゆる自助グループに参加することも勧めています。自助グループ参加の利点は、同じような悩みを共有する人の話を聞くことによって、自分一人が特殊でないということが分かり、また、他の人の体験を聞き視野が広がることにあります。

また、自分でもできるものとして、リラクセーションがあります。特に「腹式深呼吸」は不安な気持ちを静めるのに効果があると多くの専門家が勧めています。不安な気持ちが起きた際、お腹の筋肉を使ってゆっくり鼻から息を吸い口から吐き出すことを繰り返してみましょう。

最後に、過剰で持続する不安に対しては医学的な対応が必要といえますが、先に述べたように不安自体は生きていく上で必要なものです。そうだとすれば、不安をなくすという発想でなく、「不安と共に生きる」という考え方が適切です。このことを実存心理学では、「不安は生きる証」ととらえています。つまり、不安を敵視し回避するのではなく、受け止める姿勢が逆に不安な気持ちを和らげるのにつながるということです。

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