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漢字が書けない子供。スマホが原因?これって病気?対策について

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国語 勉強法
漢検 対策

スマホにより子供たちが漢字を書けなくなっている?

ITの進化によって私たちの生活は大きく変わりました。以前に比べ便利で快適な生活が送れるようになりましたが、ITの進化が生み出したデメリットも少なくありません。そのなかでも、字を書くことが減り、簡単な漢字さえ書けなくなったことは、大きな問題の一つです。

特にここ数年は、小学生からスマートフォンを使うことも当たり前となり、授業以外で漢字を書く機会は大幅に減少しています。そして、これは単純に漢字が書けなくなるという問題だけではありません。では、それ以外にどういった問題があるのでしょう?ここでは、ITの進化が及ぼす負の側面について考察をしていきます。

ワープロのころから簡単な漢字を書けない人が増加

「簡単な漢字が書けない、思い出せない」ということを、身のまわりでも確かによく耳にします。しかし、これは最近始まったものではありません。実際、2012年2月~3月にかけて全国16歳以上の男女を対象に文化庁が行った「国語に関する世論調査」の結果を見ると、66.5%が「漢字を正確に書く力が衰えた」と回答。同調査の2001年の結果は41.3%ですから、実に11年で25%以上の増加です。この結果からも、年齢にかかわらず漢字が書けない人が増加しているのが特に目新しい現象ではないことがわかります。

上述した調査では、2001年の時点ですでに約40%の人が漢字を正確に書く力が衰えたと回答していますが、実は30年ほど前にワープロが広く普及しはじめた時代から、「手で漢字を書かないから、書けなくなった」ということは言われていました。もちろん最近ではスマートフォンで検索するだけで、辞書ソフトさえ使わずに言葉の意味がわかります。また、中高生がメールやLINEで漢字を確認するのも当たり前の光景ですから、それがいっそう顕著になっているということは言えるでしょう。

スマホ利用が原因で覚える必要がなくなった漢字と電話番号

スマートフォンの普及がもたらしたもう一つの弊害は、「電話番号が覚えられなくなった」です。今はもう使われていない大学時代の友人の下宿、何年も電話していない親戚の家の電話番号はいまだに忘れていないのに、最近頻繁にかけている取引先の電話番号はまったく覚えていない。そうした経験は私自身にもありますし、多くの人に覚えがあるのではないでしょうか。

その理由として考えられるのは電話機の進化です。ダイヤル式電話の時代は、ダイヤルが戻る時の音と時間が、番号を自然に覚える手助けをしてくれました。「プッシュホン」に変わっても、番号ごとの音の調子が、代わりをしてくれたのです。

しかしその後、固定電話の電話機にもさまざまな形の短縮機能が装備され、頻繁に電話する相手先へは、短縮を使うのが当たり前になりました。現在スマートフォンでは、マナーモードにしていれば番号を押す時に音が出ませんし、音が出る状態でもかつてのような音色の違いはありません。何よりも、いちいち電話番号を入力すること自体が、稀なのではないでしょうか。

新しく行くお店の予約をするのにも、番号の入力などせず、表示されている電話番号をクリックするだけで、電話がつながります。これは漢字のところでお話しした「使わない」ことの、最たる姿です。この場合、おそらく先方の電話番号を覚えていないどころか、「認識すらしていない」と考えられます。

現在は漢字と電話番号だけかもしれません。しかし、今後、翻訳機能が進化すれば、外国語を覚える必要もなくなるでしょう。このように技術の進化は私たちにさまざまな恩恵を授けてくれる一方、今までは当たり前にできていたことが、できなくなってしまうリスクも多分に含んでいるのです。

漢字が書けない、覚えられないことへの対策として文字を書くことの重要性

仕事はもちろん、学校でもタブレットを使った授業を行う学校が増えているなど、私たちは漢字どころか「文字」を手書きで書く場面さえどんどん少なくなっています。しかし、スマートフォンやパソコンに頼らずに文字を書く重要性は昔も今も変わりません。

では、なぜ、文字の手書きが重要なのでしょう。その主な理由は次のとおりです。
【脳が活性化する】
脳を活性化させる最大の方法は、脳を使う機会を増やすことです。当たり前と思うかもしれませんが、これがもっとも効果的な方法のひとつです。
では、「文字を書く」という行為で考えてみましょう。まず、「何を書くか」「どんな順番で書くか」「書き出しと締めはどうするか」などを考えます。また、実際に書く際には、漢字とひらがなとカタカナ、そして外国語などの使い分けも考えるでしょう。これらの考えるといった行為はすべて脳の活性化につながります。

ここまでであれば、手書きとスマートフォンやパソコンで書くのに違いはありません。しかし、手書きの場合、「鉛筆で書くか、ボールペンで書くか、色ペンは使うか」「ノートに書くか、チラシの裏に書くか」「文字の大小、太さ」など書く段階になっても、考えなくてはならない事柄がたくさんあります。さらにキーボードに比べ、手書きの方が細かい指使いが求められるため、より、脳のさまざまな部分を使えるといった利点もあります。

【創造性が高まる】
手書きと創造性の関連性は科学的に証明されているわけではないため、必ずしもすべての人にあてはまるわけではありません。しかし、創造とはまったく何もないところから新しいものを生み出すだけではなく、既存のもの同士の融合によって生み出されるものもあります。そのためにやるべきことの一つが、脳の活性化です。「手書き」によって常に脳のさまざまな部分を刺激し、活性化させておけば、創造性を発揮できる機会も増えるのではないでしょうか。

【記憶力が高まる】
スマートフォンやパソコンで文字入力するのに比べ、手書きのほうが記憶力が高まるという調査結果は、以前より多くの大学や研究所から発表されています。

例えば、2016年、アメリカのプリンストン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の共同研究があります。講義の内容を手書きで取る学生とノートパソコンで取る学生を比較したところ、手書きの学生のほうが成績が良かったうえ、より、長期間にわたって記憶が定着していたという結果が出ました。また、同時に新しいアイデアを思いつきやすいといった傾向もあったそうです。

そのほかの調査でも似たような結果が出ています。その理由として、パソコンで講義内容を取る学生は、講師が語った言葉をそのまま入力する傾向があるのに対し、手書きで取る学生は、いったん自分のなかでまとめてから書いている点が挙げられます。この「いったん自分のなかでまとめる」という行為が、記憶の定着に大きく影響があるのではと考えられます。

なぜ、パソコンを使う学生は考えないかといえば、パソコンのほうが手書きよりも短時間で多くの言葉を取れるからです。しかし、手書きの場合、リアルタイムで講師の言葉をすべては取れません。

ただ、これだけであれば「手書きがよい」のではなく、考えてまとめる行為が重要なのでは? と思う人も多いかもしれません。しかし、そもそもパソコンは多くの作業を並行して行えるため、注意力が散漫になる一方、手書きは「書く」ことに集中できるといった利点があるといった調査結果もあります。

つまり、手書きには集中力を高める効果があり、それが結果として記憶の定着にも大きな影響を与えているということです。そういった意味では、手書きという行為が記憶力を高めるのに役立っていると言えるでしょう。

どうしても漢字が書けない場合は学習障害の病気を疑ってみる

脳の活性化や創造性、記憶力の向上。こうした点を見ると特に学生はスマートフォンやパソコンよりも手書きの量を増やすことが将来的にも成長の糧になると言えます。手書きには多くのメリットがあっても、「どうしても漢字が書けない」「文字が書けない」という場合もあるでしょう。

漢字や文字が書けない理由はさまざまで、単純に書くのが面倒、嫌だといったものもありますが、場合によっては学習障害という病気の可能性もあります。

学習障害とは、特殊支援学級に通うほどではないものの、「読む・書く・話す・聞く」や「計算、推論する」といった能力のいずれか、もしくは複数の習得や使用が困難な状態を指すものです。そのなかでも特に「書くのが苦手」といった場合は、書字障害を疑ってみてください。こうした障害の問題点は、知的発達に大きな遅れがない点です。そのため、なかなか病気だという判断が難しく、「本人の努力不足」と思われてしまいます。

学習障害の原因は、ひとりひとり異なるうえ科学的に解明されていませんが、主な傾向としては次のような点が挙げられます。

・文字の形をうまく認識できない視覚情報処理の不全
・文字と音を結びつけて読むことが難しい音韻処理の不全
・同年代の生徒に比べ、細かな作業や目と指先の協調運動が不得手な発達性協調運動障害

このようにさまざまな原因が考えられるため、そのなかで一つでも気になる点があれば、無理やりほかの子と同じようにやらせるのではなく、病気である可能性を疑い、学校の先生とも相談しつつ、専門医に診てもらうことをおすすめします。

デジタルの利便性に潜む危険性についても認識を

ことは漢字、電話番号のみにとどまらず、社会や生活、そして勉学などさまざまな局面に共通するものです。簡単な漢字さえスマホで変換する子どもや若者が、一定の年齢になった時、事態はより一層深刻になるのではないかと危惧されます。

デジタル機器を利用した新しい「勉強」の仕方も、年々開発、導入が進んでいます。中にはその利便性、実効性に、十分納得のいくものもあるのですが、しかし便利さの一方に潜む危険も、しっかり見きわめる必要がありそうです。

使わない漢字、使わない知識を忘れるだけでなく、デジタルで手軽に手に入れた知識は忘れやすいため、「考える」ことの質までもが変わってしまうかもしれません。

また、パソコン文字で古くからの漢字がいつの間にか改変されていることも、気になります。本来「はぐ」は、上記画像の赤字の漢字で表すのですが、「剥ぐ」となっている例などです。また「つなぐ」も、「繋ぐ」ではなく上記画像の赤字で表します。現在は、上記画像の黒字に変換されていることが多いです。

きちんとした検討を経ずに、固有の由来を持つ漢字がパソコンベースで変えられてしまう。こうした点にも、デジタル全盛時代の危うさを感じずにはいられません。文化審議会漢字小委員会が、「印刷文字の多様化」を理由として、手書きの際の漢字の「とめ、はね」の違いなどを幅広く容認する方向性を打ち出したことにも、当然私は反対です。

今回、紹介したように、字が書けないのは努力不足ではなく、病気の可能性もあります。しかし、基本的には、利便性や現況を追認するだけでなく、デジタル一方向へのみ流れてゆく風潮に対して、歯止めをかけることも重要なのではないでしょうか。

小田原漂情

国語力に定評がある文京区の総合学習塾教師

学習塾塾長

小田原漂情さん(有限会社 言問学舎)

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