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AV撮影と知らずに出演契約 その契約断っても大丈夫?

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アダルトビデオ業界の実態

夫のDVをねつ造する浮気妻の実態、問われる罪は?

先日、NPO法人ヒューマンライツ・ナウが3月3日、記者会見を開き、若い女性たちがアダルトビデオに強制出演させられているという実態について、調査結果を発表しました。
その実態はかなりひどいもので、なかには奴隷のように撮影されているケースもあるようです。
女性たちがアダルトビデオ撮影と知ったあとも、撮影に応じてしまっているのは、報道によれば撮影直前までアダルトビデオだと知らされないまま、署名した契約書や違約金の存在などをたてに出演を強要するケースがあるからとのことです。

アダルトビデオ出演契約の有効性について

こういった状況で、女性がアダルトビデオを撮影したプロダクションなどと結んだ契約・あるいは撮影を拒否した場合、プロダクションなどが請求する違約金などは有効でしょうか。
出演した女性とプロダクションとの契約形態にもよりますが、どういった場合に契約の有効性を争ったり、違約金の支払いを拒否できるか、場合を分けて考えてみたいと思います。

撮影に応じた女性が高校生など、未成年者である場合、親の承諾なくして契約をすれば、基本的には取り消しが可能です。

アダルトビデオ撮影と知らなければ契約は無効にできる

それでは、すでに成人であるときはどうでしょうか。
たとえば、「有名な雑誌のモデルを探しているのだけど」と声を掛けられ、雑誌モデルになることを前提に契約を結んだとしましょう。たとえ契約書自体には、アダルトビデオの撮影に応じるかのような条項があったとしても、契約を結ぶにあたっての前提(動機)があくまでも「雑誌モデルになること」で、黙示的といえ動機として表示されているといえます。
アダルトビデオの撮影と知っていれば契約に応じなかったでしょうから、契約を結ぶに至った動機に錯誤(食い違い)があるとして、契約が無効と主張することが考えられます。

また、「雑誌モデルにならないか」と言って、実際にはアダルトビデオの撮影であった、というとき、撮影の内容をだましていたといえるため、詐欺にあたるとして取り消しを求めることも考えられます。

これに対して、すでにアダルトビデオに出演後、契約しないと出演しているビデオを販売する、出演を家族などにばらすと脅す・あるいは部屋に監禁するなどして、無理やり契約を結ばせた場合は、強迫にあたるといえ、契約の取り消しを主張できるでしょう。

あるいは契約内容が、社会で認められている公の秩序・善良な風俗に反するものであれば、無効となる場合もありえます。たとえば、契約内容となっているアダルトビデオ撮影が監禁状態で奴隷的に行うものである場合・契約を解除するにあたり、法外な金額の違約金を要求するようなものであるときが挙げられます。

被害者自身が直接対応するのではなく、専門家に相談することが重要

こういった、契約が無効・あるいは取り消しできる場合は、その契約の中に違約金に関する規定があっても、それも含めて効力を否定されるので、支払いを求められても拒否することができます。

これに対して、契約自体の内容はアダルトビデオ撮影を含んでいなかったとしても、結果的に撮影に応じさせられ、拒否すると違約金を請求された場合は、そもそも契約で撮影に応じる理由がないことから、拒否することで違約金を支払わなければならない義務はありません。

ただ、このように契約が無効・取り消し可能、あるいは違約金の支払いを負うべき義務がないとして、それを被害にあった女性自らがプロダクションなどに訴えてもプロダクション側が応じることが難しいでしょう。さらなる被害に遭わないためには、被害者自身が対応をするのではなく、早めに支援団体や弁護士など、専門家に相談をして、しかるべき対応をする方がいいと思います。

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀さん(勁草法律事務所)

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