「ひげ禁止は憲法違反」訴訟が投げかける問題とは

 | 弁護士
半田 望

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ひげ禁止は憲法違反と訴訟問題に

枕営業はビジネス?東京地裁、驚きの判決に至った見解大阪市営地下鉄の男性運転士2人が、ひげを理由に人事評価を下げられたのは人格権を保障した憲法に違反するとして9日、市に1人200万円の慰謝料などを求める訴訟を大阪地裁に起こしたとの報道がありました。

報道によると、訴えを起こした2人は、ひげは服装や髪形と同じく個人の自由であり、基準に従わないことを理由に人事評価を下げるのは違憲だと訴え、ひげをそって仕事を続ける義務がないことの確認も求めているとのことです。

身だしなみ違反による降格は人権侵害と大阪弁護士会が勧告

また、別の報道によると、この問題について大阪弁護士会が大阪市交通局に対し、ひげをそるよう求める身だしなみの基準を設け、違反すると人事評価に反映させているのは人権侵害にあたるとして、見直しを求める勧告を行っているということです。

大阪弁護士会の勧告は、2人がひげの手入れをしていたことも踏まえ、ひげを一律に不可とするのは正当な理由がなく、個人の自由の制約にあたるとしたうえでひげを理由に人事評価を下げることは給与や身分にも影響し、職員の不利益が大きいと指摘しています。

ひげ禁止訴訟の法律的問題点

この問題については,大阪弁護士会による勧告が出ていることで法的な問題点は明らかなのですが,なぜ問題なのかを考えてみたいと思います。

まず,会社はサービス提供や安全衛生上等の理由により,就業規則や服務規程等の内規に基づき,従業員に対し身だしなみのルールを定めることがあります。例えば「業務中は制服を着用すること」や「(飲食店において)衛生上問題の無い髪型とすること」などが考えられます。

他方で,髪型や服装は本来個人の自由です。そのため,会社が服務規程等を定めるに当たっても,規制は必要な範囲に限られ,個人の自由を過剰に制限するような行きすぎた規制をすることは許されません。

例えば「当社での勤務において,男性は全員「ちょんまげ」を結うことを求める」とし,違反した従業員を解雇したり減給処分とすることは行きすぎた規制である,とするのは簡単に理解できると思います。

今回のケースでは,大阪市交通局において「ひげ」を一律に禁止していることが問題となっていますが,衛生面等でひげを一律に禁止すべき必要はなく,また手入れの有無を問わず一律に規制することは行きすぎである,と考えることが妥当であると思われます。
さらに,大阪市交通局ではひげ禁止違反を理由に不利益な処分を科しており,この点で規制としてより過剰であると考えます。

同様のケースとして,ハイヤーの運転手が口ひげを理由として乗務を外されたことに対し,口ひげが乗務に支障を及ぼすとは考えられないと判断した裁判例(東京地裁昭和55年12月15日判決)や,茶髪を理由に運送会社を解雇されたことが争われた事例で,「茶髪が営業に具体的な悪影響を及ぼした証拠はない」として解雇が無効とされた事例(福岡地裁平成9年12月15日判決)などがあります。

これらの裁判例と比較しても,今回の大阪市交通局の身だしなみ規定,および規定違反による不利益処分は行きすぎであると言えるでしょう。

使用者は従業員の自由を「自由」には制限できない。

使用者は,従業員に対し業務の必要性がある場合には,一定の服務規程を課すこともできますが,使用者が従業員の自由を「自由に」制限できるというわけではありません。

労使関係を考える上では,その命令や規定が業務上必要なのか,それにより重大な不利益を課すものではないか,という視点が常に必要なのです。

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