日本の雇用形態で同一労働同一賃金の実現は可能か?

 | 人材コーディネーター
出井 智将

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安倍首相が「同一労働同一賃金」の法制化に言及

安倍首相が法制化を言及したことで、「同一労働同一賃金」を目指す動きが進んでいます。
「同一労働同一賃金」とは、雇用形態に関わらず、同じ仕事であれば同じ賃金を支払うということであり、欧米では一般的とされています。

この動きに対し、厚生労働省では、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」立ち上げ、自民党からは、その実現を目指した政府に提出する提言の原案も発表されました。

原案の中では、パート、派遣など非正規労働者について、「昇給制度の導入」「手当・福利厚生の格差是正」「最低賃金の引き上げ」などを目指し、ガイドライン(指針)の作成や法整備を進めるべきだという考えが盛り込まれ、正社員との賃金格差を欧州並みにすることも掲げられています。

同一労働同一賃金の実施を難しくする日本独自の雇用形態

しかしながらここで問題となるのは、比較対象とされている正社員という考え方が、日本独自の雇用形態であることです。
欧米では、雇用契約が雇用される仕事に内容や勤務地などしっかり決められているのに対し、日本の正社員は、職務、勤務地、責任などが無限定となっており、実際には正社員という法的文言は存在していません。
最近話題となっている仕事の内容や勤務地を限定して採用する「限定正社員」という考え方の方が欧米型に近い雇用形態と言えるでしょう。

このような現状の中でいったい労働者の誰と誰を比べて、「同一」とするのかが今後の問題となってきます。
非正規といってもパート、アルバイト、契約社員、派遣社員など雇用形態は様々で、一般的に派遣労働者の時給は高いとされています。
非正規内部でも賃金に差がある現状で、正社員も含めた「同一労働同一賃金」となるとその実現は至難の業だと考えられます。

実際、「同一労働同一賃金」については長い間、労使間のテーマとなっていましたが、なかなか前に進んでいませんでした。
しかしながら、法制化となればなんらかの着地点を見つけざる得なくなってくるでしょう。

2018年に向けて日本の雇用形態は再構築へ

また別の問題として、すでに改正されている労働契約法によって、2018年には5年目を経過する有期雇用者の無期転換が始まり、「週2日、1日3時間」の無期雇用労働者などという方も現れてきます。

また同年には、昨年9月に改正された労働者派遣法によって、「人」の期間制限である3年目が到達することもあり、様々な労務トラブルが発生するのではないかと懸念されており、業界では「2018年問題」と言われています。
私は、今回の「同一労働同一賃金」議論も含め、この国の雇用が2018年に向かって再構築され始めたのではないかと考えています。

もちろん、賃金などは労使の交渉で決められるのが原則だとは思いますので、労使間で、正規・非正規に関わらず労働者として安心して働ける制度を構築するために真摯な議論が行われることを期待しています。

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