うつ病と間違えられやすいが、うつ病とは治療法が異なる双極性障害

 | 精神科医
鹿島 直之

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日本の高い自殺者数とうつ病対策

faef19d8ea343b97e86b1e7a2afde762_m日本の自殺者は1998年以降、10年以上にわたって3万人以上であり、常にその数は先進国の中で上位にありました。
この数年間減少傾向があるとはいえ、昨年も2万3972人もの方々が自殺で亡くなっておられます。

なお、警察庁の調査によれば、毎年の自殺者の4割の方々がうつ病に罹患されていたことが分かっています。
うつ病は日常生活が難しくなるほどの気分の落ち込みが長期間にわたって続くもので、1999年以降、うつ病の患者数は急激に増加しました。

そのため、日本ではうつ病の啓蒙や治療の促進といったうつ病への対策が政策の上でも重視されてきたのです。

精神科受診にあたって

うつ病の啓蒙が進んだ結果とも言えますが、私が院長であるメンタルクリニックでも自分がうつ病ではないかと考えて受診される方は数多くおられます。

しかし、自分がうつ状態になったと感じて受診される、またはすでに長期にわたってうつ病の治療をしておられ、自分がうつ病であるとご自覚の上で、当院に転院される方の中には、実はうつ病ではない方が少なからずおられます。

患者さんはご自分をうつ状態、またはうつ病であると思われていても、うつ状態の病相(感情が障害されている時期を病相と呼びます)に加え、気分が落ち込むうつ状態とは逆に気分が高揚して多弁、多動となる躁状態の病相を伴う双極性障害である場合があるのです。

双極性障害は気づかれづらい

うつ状態の病相に加え、躁状態の病相を繰り返す双極性障害は、従来躁うつ病と呼ばれてきたものです。
その双極型障害にあっても、長期的に見ればうつ病相が多く、障害を発症した初回の病相はうつ病相がほとんどで、躁病相は2回目以降の病相で見られることが多いのです。
また、患者さんにとってはうつ病相は苦痛ですが、躁病相は普段より気分がいいために、異常とは感じられないのです。

双極性障害のⅡ型はさらに気づかれづらい

双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は躁状態、Ⅱ型は軽躁状態を伴うものとして分類されています。
Ⅰ型の躁状態では、多弁、多動に加え、過度に自尊心が高まることで、周囲を怒鳴りつけたり、さらには多額の浪費をしたりすることから、周囲にも問題行動として気づかれます。

しかし、Ⅱ型の軽躁状態は、躁状態の程度が軽いために、社会的な能力が保たれています。
具体的には、通常より対人交流が活発になったり、睡眠時間が短くても元気に過ごせたりする時期があったという程度の軽躁状態で、周囲からも気づかれないことが少なくありません。

うつ病から双極性障害への診断と治療の変更

 当初、うつ病として発症した患者さんの5~15%は、治療経過中に躁病相が出現し、双極性障害に診断が変更されることが報告されています。
特にうつ病相を繰り返している場合や、10代から20代の若年発症の場合は、双極性障害の可能性が高く、その発症に注意しなければなりません。

 双極性障害の治療では、うつ病と違い、抗うつ薬が無効なことがあるばかりか、躁状態を引き起こすことで状態をさらに不安定にすると言われています。
そのため、薬物治療は、気分を上げる抗うつ薬より、気分の波を安定化する効果を持つ気分安定薬が中心となります。

なお、躁状態の後にはうつ状態が見られることが多く、自覚しづらい躁状態を自覚し、早めに主治医に相談することが大切です。
また、生活リズムの乱れが躁状態をもたらすことがあり、規則的な生活リズムを保つことが重要です。

双極性障害に気づくメリット

 長期のうつ病と思われていた方が、実は双極性障害と判明し、治療法を変えることで、改善する方もおられます。
慢性化したうつ病の治療では、落ち込みばかりではなく、いつもとは異なる気分の高ぶりにも注意することが改善のきっかけになるかもしれません。
特に疲れを忘れたかのような気分爽快感が時に躁状態を疑う好機と考えます。

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