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誰の得にもならない全国学力テスト 何が問題?

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世界でも実施されているのは稀な全国学力テスト

平成19年より、毎年数十億の予算をかけて、全国学力・学習状況調査、いわゆる悉皆(しっかい)の「全国学力テスト」が行われています。
今回は、その学力テストの内容、また実施の背景についてお話させていただきます。

まず、このような「全国学力テスト」は実は日本では50年前、すでに経験済みです。
中学2、3年を対象に行われた「学テ」と呼ばれた「全国中学校一斉学力調査」のことです。この時は、不正が横行したり、学校の序列化が起こったりと問題噴出で、結局労多くて益少なく、悉皆はたった4年で終了に追い込まれました。

世界に目を向けると、このような悉皆の「全国学力テスト」はイギリスと韓国で行われています。
しかし、イギリスでも同様に問題噴出で、廃止の方向へ向かっています。
つまり積極的に「全国学力テスト」に取り組んでいるのは世界で日本と韓国ぐらいのものなのです。
ではなぜ、このように国内外で評判の悪い悉皆の「全国学力テスト」を日本は復活させ、膨大な費用を使い続けているのでしょう。

政治的な背景から始まった全国学力テスト

話は2004年にさかのぼります。当時は小泉内閣で、時の文部大臣は中山成彬氏でした。
「学力低下」が叫ばれる中、彼はその打開策として「全国学力テスト復活」を小泉首相に提言し、すべては始まりました。
しかし、この中山氏には「日教組が強い地域は学力が低い」という彼独自の説を裏付けしたい、という個人的な強い思惑があったと言われています。(結局、相関関係は認められなかったのですが。)

では、なぜ、世界でも稀な、この「全国学力テスト」をまだ行い続けているのでしょう。
中山氏自身も「その役割は終わった。」と発言しているにも関わらず、です。
文科省が言うような「児童・生徒の学力の状況の把握」なら全員参加の悉皆である必要はありません。
サンプル抽出で十分可能なはずです。ただでさえ少ない教育予算を無駄づかいしなくて良いし、サンプル抽出なら、序列化も起こりにくい。
ではなぜ?
安倍首相の「学校選択制」に向けた布石とか、いったんついた多額な予算はすぐには削れない等、いろんな意見が見受けられます。
どれももっともらしく、真相はわかりません。

ただ、文科省を震撼させ、今回の「全国学力テスト継続」の動きの原因の一つになったになったと思われる出来事はありました。
それは例の2003年、2006年の「PISAショック」です。PISAはOECD加盟国向けに3年ごとに実施される、子どもの知識・技能・問題解決力などを測る調査です。

低下する日本の子供たちの学力が向上するかは疑問

そこで、2003年、2006年の調査で、日本の子供たちの学力低下が鮮明となり、大騒ぎとなりました。
特に、今後のグローバル化に際し、いちばん大事だと思われる「考える力」が弱い事が特に問題視されました。
「高大接続」で大学入試を「考える力」重視にしようとしているのも、この危機感の表れでしょう。

どうもこの「全国学力テスト」を悉皆で続けるのは、この大きな流れの中で行われているような気がするのです。
今までの「暗記重視」から「考える力重視」への学力観の転換を国民全体のコンセンサスとして定着させるには、「悉皆」が一番効果的ですから。

ただ、この「考える力」を測る、というのは想像以上に難しい。
ちょっとしたさじ加減で平均点が大幅に代わるので、時系列での比較がしにくいのです。また、作り方によっては単なるIQテストになりかねない。
その上、受験生に対策が立てられないように「パターン化」も極力避けなければならない。この分野の「作問」は、まだまだ発展途上にあると言えるでしょう。

私も特に「理科」について分析をしてみましたが、「公立中高一貫校」の適性検査によく似ている、というのが印象です。
50年前の「全国中学校一斉学力調査」の際、国語の試験の「読解力」の分野で、とんでもなく低い平均点がでて大騒ぎになりました。
日本中の国語教師を巻き込んだ論争にまで発展しましたが、これは当時の「読解力」の「作問」の技術の方に問題があった、と言われています。

このような事が、今回も起こらなければ良いのですが。

生徒の意欲を引き出し自分で考える力を育む塾講師

北川実さん(学習塾ポラリス)

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