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奨学金の支給より学びの多様性を担保せよ!

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大学生の二人に一人は学生ローン

現在、日本の大学生286万人の半数近くが奨学金を借りています。
そのほとんどが、国費で賄われている日本学生支援機構が提供する貸与型奨学金で、134万人の利用者のうち7割近くが有利子負債を負っています。
名称は奨学金ですが、実態は学生ローンです。大学を卒業してもアルバイトや非正規労働で収入が少なく返済できない若者が増え、いまや3ヶ月以上の延滞者は17万人、延滞総額は2,500億円にものぼります。

返済不要の給付型奨学金制度の創設

そこで政府は、一億総活躍プランの一案として、返済不要の給付型奨学金制度を創設すると発表しました。
選挙権が18歳に引き下げられた7月の参議院選挙直前に降って湧いたような提案が出てきたところに政治的な思惑が見え隠れしますが、経済的な理由で大学進学を躊躇している中高生にとって朗報であることは間違いありません。

しかし、実現にはいくつか課題がありそうです。
消費税率の引き上げ延期を受け、十分な予算の確保には財務省が難色を示す可能性も考えられます。
財源に限りがあれば支給対象を生活保護や住民税非課税世帯などに絞らざるを得ませんが、客観的に線引きすることは難しそうです。
また対象者の経済事情が異なるため、一人当たりの妥当な給付額を一概に決めることもできないでしょう。

当然ながら学業成績も選定基準となります。
現行の無利子奨学金の貸与条件は高校1年からの成績が平均3.5以上ですが、給付型になればそれを上回る成績でないと国民の理解は得られないとの意見もあります。
そうなると、奨学金を得るために良い成績を取ることが目的化しないかと懸念する声も聞こえてきます。

アメリカは日本以上に深刻な事態

アメリカでは日本以上に学生ローンの問題が深刻です。
大学の授業料が過去20年で2倍近くに跳ね上がった結果、今では大学生の7割が平均300万円近くの借入を持ったまま卒業し、借入残高は1兆2千億ドルにも達しています。
ローンを抱えたまま中退せざるを得ない学生も多く、収入が増えずに3割以上が延滞に陥っています。
オバマ大統領は、学生ローンの返済期間の延長や金利の減免、返済額の上限設定などの負担軽減策を打ち出していますが、いずれも決定的な解決策にはなっていません。

MOOCの積極導入で授業料抑制

こうした状況を打破しようと、最近はICTを積極的に活用して大学進学の時間とコストを抑える方策が考え出されています。
そもそもアメリカの大学入学システムは、ギャップイヤーや中退⇒出戻りが認められるなど、日本に比べてかなり柔軟ですが、1年次の一般教養科目をオンライン学習のみで履修可能にしたアリゾナ州立大学や専攻科目によってはオンラインで卒業可能にしたマサチューセッツ工科大学大学院、さらに完全にオンライン学習のみで平均3年で学士を取得できるWestern Governors 大学など、いわゆるMOOC(大規模公開オンライン講座)を積極的に採り入れることで授業料を半額程度に下げて学位を取得できるプログラムが最近増えています。

奨学金ばらまきより多様な学びの確保が効果的

日本でもようやくJMOOCが発足してオンラインコースが普及し始めましたが、まだまだ質量ともにアメリカの足元にも及びません。
しかし、昼間部に比べて学費が半分程度で済む夜間学部や通信制大学など、既存の制度と上手く組み合わせて利用すれば、奨学金など借りなくてもコストを抑えて教育の質を維持することは可能です。
そのためには、企業が4年制昼間部の卒業生のみを採用対象と見なす風潮を改め、それ以外の選択者も正当に評価することが必要です。

奨学金制度の拡充も結構ですが、学びの多様性を確保して、誰もが何時でも何処でも好きなことを手頃なコストで学び評価される環境を担保することこそが、根本的な解決策になりうるのです。

21世紀型個別+自律教育のプロモーター

小松健司さん(21世紀教育応援団 アイパル)

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