働く人に対するメンタルケアはどのように?電通過労死事件から考える

 | カウンセラー
浅賀 桃子

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電通新入社員の自殺で長時間労働の問題がクローズアップ

大手広告代理店・電通に勤めていた新入社員が2015年12月に自殺した件で、直前の長時間残業の大幅な増加により2016年9月に労災認定されたことが報道されました(労災認定された月残業時間は約105時間)。
本件では、武蔵野大学の長谷川秀夫教授が自身のSNS上で「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない。(原文ママ。以下略)」と発言し炎上、後に謝罪したことが話題になりました。                            

労働時間の長さだけでは判断できない働く人のメンタルケア

本件では「ひと月の残業時間100時間超」ということが問題になりがちです。
健康障害と長時間労働の因果関係が認められやすい、いわゆる「過労死ライン」は80時間(月20日出勤の場合、1日平均4時間の残業)とされており、もちろん長時間労働に関しても企業がしっかり対策を講じていく必要があります。

ただし、筆者の10年にわたるカウンセリング経験から「長時間労働自体はメンタル不調のひとつの要因」に過ぎず、残業の多い同じ仕事に就いていても、自殺を考えるくらい思い悩む人と元気で働き続けられる人がいることも、また事実なのです。
その逆で、残業時間がさほど多くない仕事に就いていてもメンタル不調で仕事を休む人もみられます。
つまり、「長時間労働だけがメンタル不調のそもそもの原因ではない」ということもできるのです。

やらされ感がもたらすメンタル不調

先述した「残業の多い同じ仕事に就いていて、元気で働き続けられる人とそうでない人がいる」という点に着目してみます。
筆者もストレスチェック導入企業にてカウンセリングを行う中である程度の傾向があることが分かりました。

モチベーションの源泉は、職場環境や待遇、作業状況などの「外的働きかけ」と、達成感や満足感、自分が成長できている実感、仕事を通じてなりたい自分に近づけていると感じられるかといった「内的働きかけ」の2つに大きく分けることができます。
恒常的に長時間残業が行われている企業は、職場環境や作業状況がいいとは言いづらいわけですが、「仕事が楽しいから、残業が多くてもそこまで気にならない」と感じている人と「やらされている仕事で楽しくないし、残業も多い」と感じている人とでは、明らかに後者のほうがメンタル不調になりやすい傾向があります。

指導という名のパワハラ

今回の電通過労死事件では、自殺した新入社員のSNSに「休日返上で作った資料をボロくそに言われた もう体も心もズタズタだ」といったツイートがされていたことも報じられています。
同様のケースでは「部下の指導をしていただけだ」と開き直る上司も多くみられますが、特に若手社員の場合は結果だけでなく、そこに至るまでのプロセスも認めるようなフォローアップも必要になるでしょう。

また、どうしても注意が必要な場合であっても「怒る」のではなく「叱る」対応が求められます。
「怒る」には、変えることのできない過去に対する自己の感情が現れています。
感情的に批判されても、人はなかなか受け入れることができません。
一方「叱る」は、相手の未来を慮り、改善のために理性的に言うということであり、相手の立場に立って考えていることが大きな違いです。

同じような注意を部下にした場合でも、パワハラと感じられるか、心理的なストレスになるかどうかは、相手をしっかり認め、必要に応じて叱っているかで変わってきます。
先述のツイートをみる限りは、頑張っていることを認めてもらえず心身ともに落ち込んでいるように見受けられ、指導という名のパワハラになっていたと推測できます。

相談しやすい空気感があるか

メンタル不調を抱えやすい人の共通点として、「周りに相談せず色々なことを自分ひとりで抱えてしまう」ことが挙げられます。
厚生労働省の労働安全衛生調査からも、「強い不安やストレスを相談できる人」はいても、実際に相談している割合はおよそ4分の3に過ぎません。
かつ、相談した結果「ストレスが解消された/気が楽になった」と回答した割合は9割を超えており、即効性はなかったとしても相談することでメンタルにかかる負荷は軽くなることが、統計からも明らかになっています。

普段から相手のことを気にかけ、相談しやすい空気感を職場で共有できているかどうかということも、メンタルケアには不可欠なことと言えるでしょう。

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