ネコ殺処分ゼロへ 神戸市の取組みから殺処分ゼロへの解決法を考える

 | 獣医師
田村 兼人

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猫カフェが広がる一方で野良猫は過酷な日々を過ごしている現状

2015年1月1日現在で全国246店舗という「猫カフェ」。
この猫カフェとは、ネコが放し飼いにされた空間で、癒されることを主な目的とした飲食店です。
メディアなどで取り上げられたことで、2007年以降爆発的に全国に広がりました。
このような現象からも、ネコの存在は、現代の私たち人間にとって癒しの代表的な存在になっています。

一方で、野良猫と呼ばれる野外で生活するネコたちは、これまで不遇の日々を過ごし、地域においては、時として社会問題として取り上げられることも少なくありません。
今回は、野外で生活するネコに焦点を当てて現状を解説していきたいと思います。

殺処分されるネコの現状

環境省の報告では、平成27年度全国の行政でのネコ引き取り総数は、90,075頭で、そのうち74%にあたる67,091頭が殺処分されています。
行政に引き取られた猫の16%(14,061頭)は飼育者の持ち込みによるもので、84%(76,014頭)が、所有者不明(いわゆる野良猫)です。
これら数字の内訳で特記すべきは、まだ離乳を終えていない幼齢猫の割合にあります。
飼育者の持ち込み頭数の約46%(6,415頭)、野良猫の76%(58,012頭)、殺処分頭数の74%(44,068頭)が幼齢猫となります。

殺処分を減らすための行政の取り組み

このような社会背景の中、兵庫県神戸市議会で12月5日野良猫の繁殖を抑制し、殺処分の減少を目指す条例案「神戸市人と猫との共生に関する条例案」が可決されました。
神戸市では野良猫の糞尿による悪臭が問題となっている地域があり、昨年度、673匹の野良猫が殺処分されています。

条例案は野良猫の繁殖を抑制し、殺処分の減少を目指すもので、獣医師などの専門家や市民らでつくる協議会が指定した地域での不妊・去勢手術の費用を市が全額負担します。条例は来年4月から施行される予定です。
その他の地域においても、県、市町村、各獣医師会などで猫の避妊・去勢手術に対し助成金を出しているところが増えてきています。

ボランティアが中心の「地域猫」活動

地域においては、ボランティアが中心となり「地域猫」活動が広まってきています。
「地域猫」とは地域の理解と協力を得て、地域の合意と認知が得られている飼い主のいない猫をいいます。
野良猫の避妊・去勢手術を徹底し、餌の管理・フンの清掃・地域周辺の美化など地域のルールに基づいて、適切に飼育管理された猫をいい、野良猫の数を今以上増やさないで一代限りの生を全うさせます。
つまり周辺住民の認知が得られた猫で、排除されるのではなく地域で共生する猫を言います。(しっぽの会より引用)

この地域猫活動の中で核となるのが、TNRです。
TNRとは、Trap(捕獲)、Neuter(去勢)、Return(元の場所に戻す)の頭文字をとったもので、捕獲した猫を避妊・去勢し、元いた場所に戻すことです。
これにより、地域に戻った猫は、一代限りで生を全うすることができます。
手術の際、耳の先端をV字カットすることで地域での手術有無の判別にも役立ちます。

社会全体で不幸な命を減らしていくことが重要

本稿冒頭で示した通り、自治体で収容・殺処分される猫の70%以上がまだ離乳にも至らない幼猫であるという現状から、繁殖抑制が殺処分減少に大きな効果を示すことは言うまでもありません。
行政・地域・獣医師が一体となり、生まれてくる不幸な命に対する対策を講じていく必要があると考えます。

本来、新しく生まれてくる命に対し皆が祝福し、それを守っていく社会が理想である中で、ネコに対しては逆行している現状を私たちそれぞれが考えていく必要があるのではないでしょうか?
人とネコ、それぞれが共存できる社会の実現、そして命の尊さを見つめなおすことが、不幸な命の減少につながると信じています。

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