外国人の介護労働者は介護人材不足の解消となりうるのか?

 | 介護福祉士
馬淵 敦士

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外国人の介護労働者が今後増える見込み

先般の国会において、外国人が日本で働きながら技術を学ぶ「技能実習」の対象を介護職にも広げることが決定しました。
在留資格に「介護」が加わり、今後、日本で介護職員として働く外国人が増える見込です。

外国人の介護労働者については、2008年、インドネシアとのEPA(経済連携協定)により介護福祉士候補者の受入がスタートし、厚生労働省の資料によると、平成28年度の受入人数は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国より671名の受入を行っています。
今回は、「技能実習生」としての受入を行うため、日本語能力試験合格という要件が課されるものの、EPAによる受入をはるかにしのぐ受入人数となることが予想されます。

そこで表題の通り、この受入は介護人材不足の解消となり得るのかどうか、ですが、筆者は現在の状況では難しいと考えます。
しかし、ただ単にノーと言うわけでは無く、問題点があると認識した上で、適切な支援を行えば不足解消の可能性はあります。
そこで、筆者が考える外国人の介護労働者受け入れにおける問題点を2点挙げます。

言葉と文化の問題

一つ目は、言葉・文化の問題です。
今回、対人サービスに「技能実習」が含まれるのは初めてです。
介護という仕事は言語的コミュニケーションがすべてではありませんが、その能力不足は大きな壁となるでしょう。
技能実習生に日本語能力試験合格を課すといっても、介護ならではの専門用語や日本語独特の言い回し、方言などに対応できるかどうかは未知数です。

第二言語として日本語を獲得することは、私たちが英語や中国語を学ぶのと同様、かなりの努力を要すると考えられます。
しかも、これは「ただの日本語教育」ではありません。
この「大きな壁」を取り払うだけの支援を、受入先が行うことができるかどうかは成功の鍵となるでしょう。

受入先の指導能力不足という問題

二つ目は受入先の指導能力不足という問題です。
EPAの例を見ると、外国人を受け入れることは、マンパワーの確保というメリットより、先に述べたデメリットの方が先行します。
すなわち、彼らは即戦力にはならないため、現場での適切な教育が求められるわけです。
これは外国人云々に関わらず、実は介護現場ですでに問題となっていることなのです。
現場の多忙さに追われ、上司が部下の指導をしない、部下は自分の思う通りに介護をする。
結果、連携不足となり大きな事故につながる、このような事案が後を絶ちません。
教育を外部にアウトソースする費用も捻出できないことが多いため、慢性的に人が育たない状態となっています。

指導能力不足がすでに露呈している今の介護現場において、受入・指導ができるのか、疑問を感じるところであります。
本制度の成功は、受入先に適切な指導能力の有無にかかっているといっても過言ではありません。
この事実は受入前より認識をしておく必要があります。

現状を踏まえ、問題点を挙げましたが、本制度において筆者は否定的な立場ではありません。
EPAの成功例を見ていると、外国人労働者が笑顔で高齢者に接する姿勢をよく見かけます。
介護は最終的には「心」である、と常々感じています。
それを理解し、心が通じ合えば、私の考えている問題点は杞憂に終わるかもしれません。
介護人材育成を行っている立場の私としては、成功することを切に願っています。

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