医療ビッグデータ法整備 治療・薬開発に活用 個人情報保護などの問題は?

 | 弁護士
田沢 剛

この記事を読むのに必要な時間の目安: 約 1 分

医療ビッグデータ法と個人情報保護法との関係

医療機関等で蓄積された個人の情報をビッグデータとして新薬の開発や治療効果の分析といった公益目的で利用できるようにするための「医療分野の研究開発に資する医療情報提供促進法案(仮称)」(以下「医療ビッグデータ法」といいます。)が,本年1月20日に召集される通常国会で提出されるとの報道がありました。
センシティブな個人情報が利用されることにならないか,個人情報保護法との関係を解説してみます。

改正個人情報保護法を背景に医療ビッグデータ法が推進されることに

平成17年4月に施行された個人情報保護法は,情報通信技術の発展や事業活動のグローバル化等の急速な環境変化により,法律の制定当初には想定されていなかったパーソナルデータの利活用が可能となったことを背景として,平成27年9月に改正されました。
この改正個人情報保護法は,本年5月の全面施行が予定されているところですが,この改正法では,「個人情報」を特定の個人を識別することができる情報と定義付けた上で,本人の人種,信条,病歴など本人に対する不当な差別又は偏見が生じる可能性のある個人情報をさらに「要配慮個人情報」として位置付け,その取得及び第三者提供については原則として本人の同意を得ることを義務付ける一方で,特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報を「匿名加工情報」と位置付け,これについては目的外利用や第三者提供を行う際の本人の同意を不要として,その利活用を確保できるようにしています。

要配慮個人情報が漏洩することは本当に無いのか?

しかしながら,今回の医療ビッグデータ法では,国が医療系の学会や医薬品の開発などを行っている団体を「認定機関」に指定した上で,この認定機関が,医療機関等が保有する個人情報を集めた上で,情報を匿名化し,本人の同意を得ることなくこれを大学や研究機関に提供できるようになっているようです。
匿名化されている状態で大学や研究機関に提供されるのであれば,改正個人情報保護法との関係で問題がないように思いますが,その前段階として,医療機関等から認定機関に対し「要配慮個人情報」が提供されるわけですから問題が生じます。
特に,「要配慮個人情報」については,オプトアウト(予め必要な事項を本人に通知し,又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに個人情報保護委員会へ届け出ておくことにより,本人の事前同意を不要とすること)の方法であっても第三者提供ができない仕組みになっているのですが(同法23条2項),「法令に基づく場合」には,そもそも本人事前同意が不要であるため(同法23条1項1号),新たな法律を作ることで,本人の事前同意の取得というハードルをクリアするということのようです。

プライバシーという個人の利益と新薬の開発や治療効果の分析といった公益が対立する場面ですが,センシティブな「要配慮個人情報」は,一旦漏洩してしまうと本人の人生を台無しにしてしまいかねない問題を孕みますので,安易に公益を優先させることなく慎重な議論を重ねて頂きたいものです。

専門家に詳しい記事を書いてほしい悩みや困りごとはありませんか?

JIJICO編集部では、悩みを抱える読者の皆さまと、それを解決することができる専門家をつなぎ合わせ、世の中から「困った!」を無くしていくサポート役を担って参りたいと思っています。

いま、皆さまご自身や、皆さまの身近な人たちが抱えている「解決したい悩み・問題」について、ぜひ編集部に声をお寄せください。

「こんなことについて詳しく知りたいんだけど誰に聞いたら良いか分からない」
「こんな問題で困っているけど、詳しく書いてある情報がなかなか見つけられない」

このような皆さまのご意見を集約し、最適な専門家を選んで、そのテーマについて詳しくふれる記事を作成していきます。JIJICOの記事を通して、読者の皆さまの問題解決のお伝いができれば幸いです。

今、気になるニュースを専門家が解説!メールアドレスを入力するだけで毎朝届きます。

Facebookコメント

PageTop