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知覚過敏の原因と対策。甘いもの、熱いものがしみるなどの治療法は?

カテゴリ:
医療・病院
キーワード:
歯周病 予防
歯周病 治療
歯周病 口臭
{知覚過敏の原因と対策}

虫歯でもないのに甘いものや熱いものが歯にしみる、知覚過敏とは

虫歯で穴が空いているところに、「甘いものがしみる」「熱いもの、冷たいものを口にするとしみて痛い」といった経験をしたことがある人は少なくないでしょう。では、虫歯でもないのに歯にしみるのはなぜでしょう。

これらは「知覚過敏(ちかくかびん)」の代表的な症状で、虫歯がなくても歯がしみることがあるのです。

知覚過敏という言葉は、歯磨き粉のコマーシャルなどで耳にしたことがあるかもしれませんが、正式には「象牙質知覚過敏症(ぞうげしつちかくかびんしょう)」と言います。誰にでも起こりうる症状であり、アイスなどの甘いもの、熱いもの、冷たいものを飲食をするとき、また歯磨きをする時に痛みが生じて不快に感じます。この知覚過敏の原因と治療法についてご説明します。

歯の構造と知覚過敏のメカニズム

まず、私たちの歯の構造について説明します。歯は、エナメル質、象牙質(ぞうげしつ)、歯髄(しずい)と3層構造になっています。「エナメル質」は歯の表面を覆っている部分で、半透明です。エナメル質は非常に硬く、ものの硬さを表すモース硬度では、1~10段階のうちの7で水晶と同じ硬さです。しかし、酸には弱く簡単に溶けてしまいます。

そして、エナメル質の内側には「象牙質(ぞうげしつ)」と呼ばれる組織があります。象牙質の硬度は5~6で、エナメル質に比べると柔らかく柔軟性があります。一人ひとりの歯の色はこの象牙質が基本となります。半透明のエナメル質から象牙質が透けて見えているのが、私たちそれぞれの歯の色です。

象牙質の内側には「歯髄(しずい=いわゆる歯の神経)」があります。虫歯がズキズキ痛むのは、この歯髄に炎症が生じているからです。知覚過敏は歯髄に炎症はないものの、刺激が伝わりやすい状態になり、冷たい飲みものや歯磨きの刺激などで一時的に痛みが生じる状態を言います。

エナメル質の内側にある象牙質には「象牙細管(ぞうげさいかん)」と呼ばれる細い管が無数にあり、歯髄に向かっています。象牙質がエナメル質に覆われている場合、冷たい飲みものや歯ブラシなどの刺激はエナメル質に保護されるため、「しみる!」「痛い!」ということにはなりません。しかし、なんらかの理由で象牙質がむき出しになってしまうと、歯髄に刺激が伝わり知覚過敏が生じます。

知覚過敏6つの原因

知覚過敏の原因には次のようなものがあります。

① 歯根の露出
歯は大きく2つに分けられます。にっこり笑った時などに見える部分を「歯冠(しかん)」、歯茎(歯肉)で見えない部分を「歯根(しこん)」と言います。歯周病などにより歯茎が下がり、歯根部が露出すると知覚過敏が起こります。理由は、歯茎が下がることで象牙質がむき出しの状態になるからです。歯根部分の象牙質を覆っているのは、エナメル質のように硬い組織ではなく、「セメント質」という象牙質よりもやわらかい組織で、刺激が伝わりやすいのです。歯根の露出は、歯磨きの際の乱暴なブラッシングや力の入れ過ぎでも起こります。特に強い力で横磨きをすると歯茎と歯の境目あたりがくさび状に磨耗して歯根が露出、象牙質がむき出しの状態になり知覚過敏をなってしまいます。

②歯ぎしりやくいしばり
歯ぎしりやくいしばりによって歯の表面のエナメル質部分が摩耗して内部の象牙質が露出すると、食べ物や飲み物などの温度がダイレクトに歯に伝わり知覚過敏になります。歯ぎしりによって犬歯や小臼歯の歯周組織を傷めてしまうことで、歯茎が下がる場合もあります。また、歯ぎしりやくいしばりによって歯にストレスが加わると、刺激に対する歯自体の感受性が高まり、同時多発的に「複数の歯がしみて痛い」といった状態になることがあります。臨床的には授乳中の人など、女性に多く見られます。

③歯の亀裂やひび割れ
歯ぎしりなどによって強い力がかかると、歯に目に見えないひび割れや亀裂が生じ、内部に刺激を伝えやすい状態になって知覚過敏を起こすことがあります。この亀裂やひび割れは、噛み合わせも関係しています。よく見られるのが「くさび状欠損」です。歯に強い力がかかることで、歯と歯茎の境目付近が欠けてしまい、その部分の象牙質が露出して、知覚過敏の症状が出るのです。

④歯牙酸蝕(しがさんしょく)
歯牙酸蝕とは、食べものや飲みものに含まれる酸によって歯の表面のエナメル質が溶けてしまうことを言います。歯の表面を覆っているエナメル質は硬い組織ですが酸に弱く、エナメル質が溶けてしまうと、その内側にある象牙質がむき出しの状態になり、歯がしみます。歯牙酸蝕をもたらす食べものや飲みものとしては、柑橘類、炭酸飲料、清涼飲料水などが挙げられます。いずれも酸を多く含んでいます。

⑤歯周病と知覚過敏の関係
知覚過敏の原因の「①歯根の露出」で、歯周病などによって歯根が露出することを指摘しましたが、知覚過敏と歯周病の関係をもう少しお話ししておきましょう。歯周病は、歯と歯茎の境目に細菌が停滞し、歯の周りに炎症が起こる病気です。炎症が歯茎に限定されているときは「歯肉炎」、さらに進行すると「歯周炎」と呼ばれますが、段階が進むと歯と歯茎の境目(歯周ポケット)が深くなり、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が溶けることで歯茎が後退し、「歯が長く見える」状態になります。
つまり、象牙質が露出した状態、知覚過敏を起こす状態になるということです。

また歯周病によって肩こりや頭痛、食欲不振などの不調が現れることがあり、歯周病には十分に気をつけましょう。なお、虫歯の治療にともなって知覚過敏が起こることもあります。これは歯を削るなどの虫歯治療によって、歯の神経が敏感になり、痛みを感じやすくなっているとも考えられます。しばらく経過を見ると症状がなくなることもありますが、場合によっては再治療が必要になることもあります。いずれにしても歯科医に相談しましょう。

知覚過敏の治療について

では、知覚過敏の治療についてお話ししましょう。
①専用薬剤の塗布やしみ止め成分入り歯磨き粉
簡単なのは、歯科医院で専用薬剤を塗布することです。軽度の知覚過敏であれば、数回繰り返し薬を塗布することで歯がしみにくくなります。ざっくり申し上げると、歯に開いている非常に細かな穴をふさぐことで歯に刺激が伝わりにくくする効果があります。市販のシュミテクトのような歯磨き粉にも同様の成分が含まれていますので、一定期間使用することで効果が期待できます。ただ、歯科医院で専用薬剤を塗布するほうが、よりも効果が高く即効性もあります。

②断熱材として歯科用レジン(プラスチック)を詰める
薬剤の塗布で効果がない場合や、しみが強い場合には別の方法を考えなくてはなりません。歯の根元が露出している場合、くさび状に削れている、すり減ったような部分には、白い樹脂の詰め物を施すことでしみが改善する場合があります。

③歯の神経を抜く
症状が非常に強い場合や、あきらかに亀裂が入っているといったケースでは、穏やかな方法では改善しないため、最終手段として麻酔をして神経を取り除く処置(抜髄)を行います。痛みを歯が感じなくなるため、処置すれば速やかに症状が改善します。

④そのほかの方法
歯ぎしりやくいしばりが原因と考えられる場合は、就寝時に装着するマウスピース(ナイトガード)を用いる方法があります。マウスピースをすることで歯にかかる力を抑制し、エナメル質や歯周組織の破壊を防ぎます。また、歯のかみ合わせが悪く、そのために知覚過敏になっている場合、歯を削るなどしてかみ合わせの調整を行う「咬合調整」も行われます。

最近では、レーザーを照射して知覚過敏の症状を軽減する方法もとられていますが、レーザー治療は保険適用外(自由診療)になりますし、効能・効果を客観的に検証した文献などは見あたらず、効果はよく分かっていないのが現状です。

知覚過敏が悪化しないように、自宅でできる予防を

歯磨きや食べ物、飲み物に注意するなど、自宅でもできる知覚過敏の予防についてお話しします。
①知覚過敏用の歯磨き粉
知覚過敏用の歯磨き粉を一定期間使うことで、症状が緩和されることがあります。知覚過敏用の歯磨き粉には、歯髄(歯の神経)への刺激を抑制する硝酸カリウムや、歯髄に刺激を伝える象牙細管を封鎖する働きを持つ乳酸アルミニウムなどの薬用成分が含まれており、「しみる」「痛い」といった症状の軽減を目指すことができます。また、フッ素(フッ化ナトリウム)が入っている歯磨き粉は虫歯予防におすすめです。ブラッシングなどで削れてしまったエナメル質を補修する作用があり、知覚過敏の予防にも効果が期待できます。ただ、知覚過敏用の歯磨き粉を1~2週間ほど使っても症状が改善しない場合は、知覚過敏ではなく、虫歯、あるいは歯周病の可能性があります。そうした場合は早めに歯科医院へ行き、歯科医に診察してもらいましょう。

②正しいブラッシング
乱暴なブラッシング、横方向に力を入れて磨くなど歯磨きにクセがあるとエナメル質が徐々に削られて知覚過敏を招きます。正しいブラッシングを心がけ、歯のエナメル質の摩耗を防ぎましょう。正しいブラッシングは歯周病、そして知覚過敏の予防につながります。軽い力で、ていねいに磨くことがポイントです。なお、ホワイトニングのために研磨剤が配合された歯磨き粉は、エナメル質を傷つける可能性がありますので、使う際は量を少なめに、軽いブラッシングを心がけましょう。

③酸性度の強い飲食物を控える
歯のエナメル質は人体の中で一番硬い組織ですが、先にお話ししたように酸には弱い側面があります。知覚過敏の予防には、酸が多く含まれる果物や炭酸飲料、スポーツ飲料などは控えましょう。ワインなども酸が多く含まれています。酸の多い飲食物で歯のエナメル質が溶け、歯牙酸蝕になる人が増えています。酸性度の強い飲食物を控えることが、知覚過敏の予防、また症状の改善につながります。

知覚過敏への対策はまず歯科医院で歯のチェックを

知覚過敏が起こった場合、まずは歯科医院を受診して虫歯がないかをチェックしてもらってください。虫歯でなければ、歯磨き粉などを利用しながらしばらくは症状の程度や様子を見ながら、歯科医師と相談して治療法を決めていくのがよいでしょう。

知覚過敏は虫歯とは違いますが、「歯のSOSのサイン」でもあります。早めに歯科医院を受診することが大切です。

飯田裕

歯科インプラント治療のエキスパート

歯科医

飯田裕さん(つくばオーラルケアクリニック)

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