ポピュリズムの台頭と民主主義のあるべき形

 | 弁護士
半田 望

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ポピュリズムとはどういう意味?

ここ最近の政治問題,特にアメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱の選挙を通じて,報道や識者コメントにおいて「ポピュリズムの台頭」に対する危惧感が指摘されるようになってきました。
「ポピュリズム」という言葉を聞き慣れない方もおられると思います。
本来は「一部のエリート主義ではなく,大衆の素朴な常識によって政治を行う」という意味ですが,別の意味として「大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢」,「大衆迎合」「大衆扇動」としても用いられます。
近年危惧される「ポピュリズム」は,この「大衆迎合」「大衆扇動」の意味です。
具体的には,「大衆」と「一部のエリート」を区別し,エリートは大衆を利用して利益を得る「悪」であるとレッテルを貼り,自分は大衆の味方である,大衆の希望を実現するという宣伝文句で支持を得る手法と言われます。

独裁政治など取り返しのきかない結果を招く危険性

「大衆迎合」としてのポピュリズムは,大衆の素朴な感情に訴えかけるという点で熱狂的な支持を巻き起こすなど強い効果を有する反面,これが暴走した場合取り返しのつかない結果になります。
古くはナチス・ドイツの台頭とヒトラーの独裁もポピュリズムの結果と言われていますし,近年では,イギリスのEU離脱やヨーロッパ諸国の選挙などで「右派ポピュリズム」の台頭があった,と指摘されています。

ポピュリズムの台頭はなぜ危険なのか?

では,なぜポピュリズムの台頭に対し危惧感が示されるのでしょうか。
筆者は,ポピュリズムが善悪二分論の構造を採ることと,多数決民主主義と重なることに危険性があると考えています。
まず,ポピュリズムは世の中を敵と味方の二つに分け,エリートやエリート的なものを敵とすることで,大衆の溜飲を下げるという特徴があります。
しかし,敵視されるエリートが必ずしも「悪」であるとは言い切れません。

また,近年問題視される我が国でのヘイトスピーチのように「特権を享受する悪」を作り出し,むき出しの悪意を向けることもポピュリズムの行き着く先ではないかと思います。
しかし,困ったことにポピュリズムは一握りのエリートによる政治ではなく,多数を占める大衆の希望を忠実に実現する建前であり,その点で多数決民主主義と大きく重なる部分があります。
そのため,「みんなが決めたのだから仕方が無い」という理屈が成り立ってしまうのです。

しかし,以前にも拙稿「トランプ・ショックから考える民主主義」で述べたとおり,民主主義は万能ではなく,その時々の雰囲気に流されたり,多数者による少数者の排除が行われたりするという危険性があることを忘れてはいけません。
ポピュリズムが強くなる結果,多数派の意見こそが正義であり,少数者(必ずしも「エリート」に限りません)は無視しても構わないという流れをうみ,これが民主主義の結果として正当化されることが危惧されているのだろうと思います。

立憲民主主義こそがあるべき民主主義ではないか

では,誤った民主主義ではなく,あるべき民主主義とはどのようなものでしょうか。
筆者は,多数決によっても侵すことのできない権利(人権)が守られるという「立憲主義」に基づいた民主主義,すなわち「立憲民主主義」こそがあるべき形ではないか,と考えます。
多数決万能主義に陥らず,少数者の権利にも配慮したきめ細やかな判断を行うことは容易ではありません。
しかし,あるべき民主主義の形として,ここだけは譲ってはいけないように思います。

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