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仕事と家族介護の両立に向けた5つのステップ

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誰もが家族介護に直面する時代がやってきた

「向こう5年間であなたが家族を介護しなければならない状況になる可能性はありますか?」もしこんな問いかけを御社の従業員の方に投げかけたとしたら……。
どんな答えが返ってくるでしょうか。

5年に一度行われる「就業構造基本調査」(2012年、総務省)によると、家族の介護・看護を理由とする離職者数は増減を繰り返すものの、直近1年間の離職者数は95,000人に上るという結果が出ています。
95,000人と言えば、一つの市の人口にも匹敵する数。さらに今後は高齢化が進み、2050年には、人口に占める生産年齢人口(15~64歳)の割合が51%、65歳以上が40%と、その差がどんどん縮まることが予想されています。

これまでは、仮に家族の介護を理由に休業、あるいは退職されたとしても、それに代わる方を採用すればよいということでやり過ごしてきた企業も、これからは「雇用できない状況」が加速していくことでしょう。
また、一時的に残された社員がその業務を肩代わりしたとしても、新たに雇用できない状況が続くと社員は疲弊し、このような状態は長くは続かないことが目に見えています。
それではどうするかと考えると、やはり「介護をしながら仕事を続けられる環境」、つまり仕事と介護の両立ということを考えていかねばなりません。
言わば会社としても従業員一人一人としても、しっかり「家族介護という課題」に向き合う時代がやってきたと言えるのではないでしょうか。

仕事と家族介護の両立に向けた5つのステップ

迫りくる家族介護に向けて、企業は何をしていくべきなのでしょうか。
仕事と介護の両立に向けたステップは5つです。
?? ステップ1:現状把握
?? ステップ2:仕事の見える化
?? ステップ3:仕事の循環
?? ステップ4:介護に関する制度整備、従業員の方へ周知
?? ステップ5:制度利用、運用

各ステップについて簡単に説明します。
ステップ1 現状把握
 ここでいう現状とは、2つの側面からの把握を指します。
1つは会社の労務数字(労働時間、時間外労働の時間、有給休暇の取得状況、平均年齢等)、もう1つは、従業員の個人的な情報(各従業員の家族構成、配偶者がいる場合は年齢、配偶者の勤務状況、ご自身および配偶者のご両親の年齢、同居・別居の状況、介護が必要となった場合にご自身が介護にかかわる可能性等)です。

ステップ2 仕事の見える化
いわゆる「仕事しらべ」と言われるもので、部門・部署単位で業務の洗い出しとステージ(レベル)分けをします。
見える化すると、各部門における業務の振り分け方の特徴がはっきりと出ます。
また、各人の業務の属人化度合いも分かります。

ステップ3 仕事の循環
仕事と介護の両立をする上で超えなければならない壁の一つが「脱属人化」、つまり「この仕事は○○さんでなければできない」という状態です。
そのために外せないのが「仕事の循環」であり、ジョブローテーションとも言われるものです。

ステップ4 介護に関する制度整備、従業員の方への周知
ここでようやく介護に関する制度を整備していきます。
制度は休業、休暇、短時間勤務、フレックスタイム等様々なものがあります。
厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」には企業の多数の取り組みが紹介されていますので、ぜひ参考に自社の制度を設計してみてください。
前述のステップ(1~3)を踏んだことが、自社にとって本当に必要な制度は何なのかを見極めるための貴重な材料となります。

ステップ5 制度の利用・運用
実際に家族の介護が目前にやって来た際、ステップ4までの内容をもとにその従業員の方が両立するためにはどうすれば良いか、話し合い、運用していきます。

フルオーダーではなくパターンオーダーで取り組みたい仕事と介護の両立

現在家族介護が目前に迫っている従業員の方が居ない場合は、「該当する社員が出てきたら考えよう」となりがちです。
しかし、それは言わばフルオーダーでスーツを作るようなもの。
状況や要望をすべて聞いてから制度設計していては、後手になってしまいます。
家族介護は突然やってきます。
今回示したステップに則り「基本形」を設計しておき、いざ家族介護することとなった従業員の方の状況に応じてアレンジしていく、という「パターンオーダー」形式がスムーズでしょう。
従業員の方にとってみても、ある程度の「型」を作っておく方が対策も立てやすいですし、何より「仕事と介護の両立を真剣に考えてくれているのだ」と会社への信頼が高まります。

冒頭の質問「向こう5年間であなたが家族を介護しなければならない状況になる可能性はありますか?」。
ある企業では、40代50代に向けてこの質問を投げかけたところ、8割以上の従業員の方が「YES」と答えられたという報道もあります(NHK「クローズアップ現代」より)。
間違いなく中期で経営課題となってくるであろう「仕事と介護との両立」。
各社での取り組みが実のあるものになることを願ってやみません。

神野沙樹

「活き生き組織」をともに作る社会保険労務士

社会保険労務士

神野沙樹さん(株式会社Niesul(ニースル社労士事務所併設))

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