「共謀罪」は現代の「治安維持法」とならないか?共謀罪を考える

 | 弁護士
半田 望

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共謀罪とは

現在国会で組織的犯罪処罰法の改正として,「テロ等準備罪」の新設を巡る議論がなされています。
これは,2人以上で犯罪を「計画」し,そのうちのいずれかが計画した犯罪を実行するための「準備行為」を行ったときに処罰することを定めるもので,犯罪の計画それ自体を処罰の対象とすることから「共謀罪」と呼ばれています。

この共謀罪は,国連の国際組織犯罪防止条約の批准に必要であるとして,過去2003年,2004年,2005年の3回にわたり国会に法案が提出されましたが,いずれも廃案となった経緯があります。
共謀罪を巡っては,日弁連や150名を越える刑事法研究者が創設に反対しています。
今回は,共謀罪の何が問題といわれているかについて整理します。

共謀罪の何が問題なのか

共謀罪の問題点は,その名のごとく犯罪の実行や予備に至らない「共謀」という人の内心に着目してこれを処罰することにあります。
近代刑法は人々の自由を保障するために処罰の対象を「行為」とし,さらに有害な結果を生じさせた既遂処罰を原則としました。
一定の犯罪に未遂罪や予備罪の処罰規定はありますが,それも法益侵害の危険がある「行為」を処罰するものです。
共謀罪の問題点は,「行為」があることを前提とせず,犯罪の謀議をもって刑罰の対象とすることで,犯罪成立の限界を曖昧にして,処罰範囲を過度に拡大するということが重大な問題なのです。

なお,法案では「準備行為」が要件とされていますが,これは何らかの「犯罪を実行するための行為」であればよく,それ自体に危険性は不要であるとされています。
そうすると,結局は必ずしも危険性のない行為を理由に内心を処罰することと等しく,問題点を解消するものではないでしょう。
共謀罪に賛成する立場からは,対象犯罪を限定しているから濫用のおそれがない,条約批准のために必要である,等の説明もなされています。
しかし,対象犯罪は限定しても277あるが,テロと関係がある者は110だけで,その110の犯罪も実際に処罰や捜査の対象となるとはテロと無関係の行為も含むとの指摘があり,必ずしもテロ対策のみに用いられるとは言いがたい内容です。

なお,公職選挙法や政治資金規正法などの政治犯罪や組織的な経済犯罪が対象犯罪から除かれているとの指摘もあります。
また,条約批准についても,多くの刑法学者が現行法の整備で対応でき共謀罪の創設は不要としており,創設を肯定する理由とはなりにくいと考えます。
その他にも色々な危険性が指摘されていますが,紙面の都合でここでは書き切れません。

「共謀罪」は現代の「治安維持法」になりかねない

歴史を振り返ると,悪名高い「治安維持法」が同様にテロ対策を名目に作られ,戦争へと突き進む中で思想の取り締まりに使われたという事実があります。
今回議論されている共謀罪も,その気になれば思想の取り締まりに使える内容といわざるを得ず,悪用の危険性が高いものと思われます。
「一般市民には適用しない」という国会での答弁もあるようですが,例えばSNSで「いいね!」を押したことで共謀罪に問われる余地もある,ともいわれています。
犯罪と無縁だから関係ない,と考えるのではなく,共謀罪により処罰範囲が膨張して自分にもよく分からない理由で疑いが向けられる危険がある,ということを是非考えて頂きたいと思います。

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