労組加入でシュレッダー係へ不当異動 労使トラブルを未然に防ぐには?

 | 人事労務コンサルタント、社会保険労務士
岸本 貴史

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アリさん「引越社」 社員と和解

アリさんマークの引越社の名称で知られる「引越社関東」(東京)で営業職だった男性従業員(35)が、労働組合加入後にシュレッダー係に配置転換(配転)させられたのは不当だとして配転の無効などを求めていた訴訟の和解が5月24日、東京地裁で成立しました。
主な和解内容は、会社は、6月1日付で男性を配転前の労働条件で営業職として復職させる、解決金を支払う、配転・罪状ペーパーの張り出しについて謝罪する、などのようです。

配置転換の有効・無効の判断基準は?

一連の報道から、感覚的に「不当な配置転換なのでは?」思われていた方もおられるのではないかと思いますが、一般的に配転の有効性はどう判断されるのか、について確認していきたいと思います。

まず、企業は、就業規則や労働協約に業務上の都合により配転を命じることができる旨が定められており、雇用契約等で勤務地や職種が限定されていない場合には、原則として個々の労働者の同意なしに配転を命じることできます。
ただし、配転命令について、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的が認められる場合、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合等特段の事情がある場合には、その配転命令は権利の濫用に当たり無効になります。

つまり、そもそも①配転命令に関して就業規則などに明記されていない場合や、②勤務地限定(あなたの勤務場所は○○だけです)や職種限定(あなたの仕事は○○だけです)という条件の元で雇用した社員を個別同意なく契約外の勤務地や職種へ配転することは原則として認められないことになります。
また、配転命令に関して就業規則等への明記があり、勤務地や職種が限定されていない場合であっても、③業務上の必要性がない、不当な動機・目的が認められる、労働者に著しい不利益を負わせる場合等には無効になります。

労使間のトラブル予防は適法性を満たすだけでは不十分

今回注目を浴びることになった配置転換に限らず、未払い残業、不当解雇など、労使間のトラブルの多くはその適法性を中心に議論され、また、一定の結論が出ればその勝者・敗者や賠償額の大きさだけに目がいきがちです。
しかし、労使間のトラブルを予防するという観点からは、適法性を満たすだけでは不十分です。
実際、「法律に違反していても労使トラブルが起きていない」企業がある一方、「法律に違反していなくても労使トラブルが絶えない」企業もあるのです。(当然、法律違反は正す必要がありますが…)

労使間のトラブルを予防するためには、適法性の他に「労使の距離感」が非常に重要です。
たとえ毎日会話できなくても、例えば、職場環境について従業員アンケートや意見交換ミーティングを実施する、中立的に話を聞く社内委員会を設置する、外部の専門家に労使の調整窓口を依頼するなど、「定期的に労使の距離感を近づける仕組み」を導入することでも効果が期待できます。
ここでの目的は、「どちらかの言い分が正しくてもう一方は間違っている」と白黒を決めることではなく、「労使それぞれが抱いている現状及び働きやすい職場に対する認識の違いを確認し、そのギャップを解消していく」ことにあります。

企業も従業員も本来訴訟など望んでいないはずです。また、企業の成長と従業員満足の向上は両立し得るものです。

「労使がお互いに『働きやすい職場にしたい』という同じ目的を共有しながら、それぞれの立場から考える働きやすい職場の定義と現状認識の違いを確認し合い、その上で各々が取り組むべきことを検討していく」

労使間のトラブルを持続的に防いでいくためには、とりわけこうしたコミュニケーションの機会を確保し、かつ形だけにならない様に機能させていくことが重要です。

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