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残業月100時間未満で決着へ 働き方改革につながるか?

カテゴリ:
ビジネス
キーワード:
働き方改革

残業100時間未満で決着へ

繁忙期の残業時間の上限をめぐって、経団連(使用者側)と連合(労働者側)との間で協議がなされていましたが、この度「月100時間未満」で決着がついたようです。
これを基に、今秋労働基準法の改正案が国会に提出される予定です。これまで実質的に無制限となっていた残業時間に上限が設けられる形となります。

この協議は、政府が進める「働き方改革」の一環として、長時間労働抑制を目的として行われました。
繁忙期の上限を含む残業規制に関する新たなルールの概要は以下の通りです(いずれも労使間で36協定を締結することが条件)。
(原則)「月45時間、年間360時間」
(特例)「年間720時間(月平均60時間)」
「月45時間を超えられるのは6か月まで」
「特に忙しい時期は、2~6か月の平均で月80時間」

どうして「月100時間未満」なのか

残業時間の上限は、そもそも何故「月100時間未満」なのでしょうか。月100時間の残業というのは、週休二日制の会社で、だいたい毎日午前9時から午後10時半くらいまで働くイメージです。
繁忙期ならこのくらい働かれている方も多いのではないでしょうか。
月100時間の残業というのは、過労死を労働災害として認定する際の一つの基準です(過労死ライン)。
繁忙期の上限を協議する際に労使の決着がなかなかつかなかったのは、経団連が月100時間を主張するのに対し、連合側が過労死ラインに抵触する月100時間を含む上限を認めることは出来ないと主張していたためです。

この度は、安倍首相の「裁定」により、連合側の主張する月100時間未満で着地を見ましたが、実際のところ99時間でも101時間でも労働者側の拘束感はそれほど大きく変わらないでしょう。
また、座る暇もないくらい多忙な残業月100時間と、業務量は多いが比較的マイペースに仕事が出来る程度の残業月100時間では、労働者に対する身体的・精神的負担は異なります。
残業時間に対する規制はあくまでハード面での整備になります。

業務内容・方法の見直しが急務

人手不足・過剰なサービス合戦・価格競争などなど、どの業種の企業をみても、労働者一人にかかってくる仕事量はますます増えている印象があります。
残業時間の上限が設定されることで外堀が埋められるため、企業としても業務内容や方法の見直しが迫られることになります。
長時間労働抑制のため、運送大手のヤマト運輸㈱はサービスの削減や運賃の値上げなどに踏み切るようです。
すでに労働基準監督署も、長時間労働に対する監督を強化しています。

働く人一人一人のスキルアップや意識改革も必要となってくるでしょう。
長時間労働は美徳ではありません。
どうすれば、効率的に仕事を進められるか、仕事に満足感を得られるかなど、仕事の内容に重点をおく方向にシフトすることが必要です。
この残業時間上限については、巷でもフォーラムが開かれるなど議論が活発になっています。
それほど世間の関心が高いことがうかがえます。今後の動向から目が離せません。

人事労務コンサルティングの専門家

大竹光明さん(社会保険労務士法人大竹事務所)

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